[コメント] 愛のコリーダ(1976/日=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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最後の大島監督のナレーションにあるように、事件がひろまって逮捕されたときも、定はわりと世間の女の人たちからは人気があったらしいのです。それって今でもそうかもしれないと思います。私も(この映画をみたり、大島渚の本を読んだ限りでは)定のことをかわいい人だなー、と感じたからです。映画の冒頭、殿山泰二の汚いちんちんを見て、ほほえむ定の顔。まず、このホホエミにやられました。なんてかわいらしい!しかも、ひどくエッチ。なんとなくハダカにしてみたいような気にさせる、微笑み。殿山泰二でなくとも「おがませてくれ!」と言いたくなる。
大島監督は「女たち、もっと素敵に」という本の中で「ビートたけしや美保純が人気があるのは、彼らがベビーであるからです。」と書いています。私にはどうして定のことがこんなにかわいく思えるのかを考えていたとき、この一文がふっと蘇ってきました。考えてみれば、定は吉蔵のまえで、いつも言いたい放題・やりたい放題ですよね。また、吉蔵もそれを望み、満足した定を見ることに満足している。アカンボをうみ、育てたことがある人ならわかると思いますが、ニンゲンの始めのころは、一番近い大人にあれをしてくれ、これをしてくれ、あーしてほしい、こーしてほしい、とストレートに要求することが許されていたし、また要求された大人のほうも、要求してくれることに喜びを感じ、満足したアカンボにシアワセを感じたり、「おりこうさんねー」などとホメちぎったりします。(たとえば、オトナ同士で、自分の要求をしゃべって、「おりこうさんね」とは言われないでしょう。)定はいつも(特に吉蔵の前では)屈託のないベビーだったんだな、と思いました。自分のモノだから、名前かかなきゃ、忘れずにもっていかなきゃ、という感じだったのかな。
また、ずっと前、テレビで見た「育てなおし」なるカウンセリング法のことも思い出しました。それは患者が小さいころから満足されてこなかった要求を、カウンセラーがどんなことでも満足させてあげる、というものなのですが、20歳くらいの男の子や女の子が、「だっこして、おっぱいのませて」とか「だっこして本をよんで」とか、小さい子供が親に普通にねだることをカウンセラーにねだり、それをかなえてもらう(実際に哺乳瓶で粉ミルクを飲みます)、というものなのです。しかも待ったなし。子供って、いそがしい時にかぎって、いろんなことをねだってきます。今思うと、「こっちをむいて」というサインなんだ、とかわかったようなことをいえますけど、そのときはやっぱり口にださずとも「うるさいな」などと思ってしまったりしちゃいますよね。しかしながら、吉蔵は定の要求をまるで親のように、なんでも聞き、かなえてあげる。また、定もそれを当然だと思っている。24時間、休みなく。「おまえさんが、イイようにやんな」というだけ。よくみると、いつも動いているのは定のほうで、吉蔵はねてるだけだったりします。人がみようと、往来でちんちんを握られようとぜんぜんへっちゃら。定が満足すればそれで満足なのだ。そのうえ、要求を満足させた定をホメたりしてる。また、不安な定を安心させるためには経血をなめることもいとわない!!私は”癒し系”という、人をおちょくったような表現がが大嫌いだが、定にとって吉蔵との日々は、定にもわからないうちに究極の癒しになっていたのかもしれない。
女にとって、これほどのシアワセがあるかしら。ほかではともかく、この人の前だけではベビーになれる。安心して自分のハダカの心を見せられる。そして、拒絶されることがない。また、相手もシアワセな女をみて、シアワセを感じるなんて。定にひそかに人気があつまったのは、逮捕されたときの彼女の笑顔が実にハレバレとしていて、一点のくもりもなかったからだと思います。女にオーガズムなどない、と信じられていた昔、世間並みの結婚もしていないし、囲われもののの女なのに、女として実にシアワセそうな定にみんな魅了されてしまったのではないでしょうか?
大好きな人と一緒にいるとき、だれでもみんなベビーになれる。ベビーになって、自分をさらけだして、お互いの自分にもわからないうちに奥へしまいこんでしまった傷を癒しあっていかなかったら、つまらない関係になってしまうと思う。ベビーになって相手にぶつかってみよう!そこから、相手とのホントの関係が育っていくかもしれない。
それにしても、大島監督はどこから、あんなにイメージぴったりの女優を見つけてきたのでしょう。彼女がみつからなかったら、この映画はできなかったと思います。顔といい、おっぱいといい、すばらしく安部定でした。BRAVO!
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