コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] あなたへ(2012/日)

解き放たれた籠の鳥。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不思議な映画だ。正直、決して抜群に優れた演出が施されているわけではないことは、鑑賞前に監督名を確認した時点で想像できたことだし、何よりこれほどワクワク感のない、ロード・ムービーとしての魅力に乏しい旅の映画も珍しく、私のようにスクリーンでいつものままの高倉健の姿が見られるだけでいいと思うような者でさえ、例えば草なぎ剛の浮いた演技を見続けることはなかなか苦しいことなのだが、それでもこの映画のところどころににグッとくるものを感じてしまったのは、その立ち居振る舞いに『天城越え』以来の感動を覚えてしまった田中裕子の存在感のなせる技としか言いようがない。

自分はこの映画を、亡き妻が籠の鳥であった夫を解き放つ話と受け取った。あなたにはあなたの生き方がある。私の死後は決して私に捉われることなく、あなたの道をあなたらしく歩んで下さい。私自身が昔愛した人の死後、あなたと出会い、こんなにも幸せな人生を送れた、その喜びを、その思いを、あなたにも知ってほしいのです。そんな彼女の言葉がすぐそこに聞こえてくるようだったし、最後図らずも鳩となった彼の姿にも、亡き妻の思いがかぶって静かな感動を得ることができた。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)IN4MATION[*] 死ぬまでシネマ[*] 3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。