[コメント] ダークナイト ライジング(2012/米=英)
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本作も抜群のオープニング・シーンを持つ映画で、ベインも登場シーン以降中盤ぐらいまでは尋常じゃない「まがまがしさ」をまとっている。その「怖さ」の根源ともいうべき顔面から外せない鎮静剤供給用マスクの視覚的・音響的効果は、多くの観客にダース・ベイダーレベルの悪役を期待させるだろう。しかし、結果としてこのマスクがよろしくないのだ。マスクを外されると普通の人になるだろうという予見を容易に許す弊もあるが、もっと単純に、マスクで顔面が隠蔽されたことにより、トム・ハーディの表情・演技が活きず、見なれて(聞きなれて)くると実に単調・淡白なキャラクターになってしまっている。或いは人物的な深みを与えられていない演技・演出の問題と云うべきかも知れない。フットボール・スタジアムのシーン辺りになると、もう殆どアホのように見える。
ともかく本作はかなり劇画っぽい映画になっている。状況や設定、或いはプロット間の辻褄合わせや整合性に対してツッコミを入れたくなる部分は多々あるが、そんなことはどうでも良いと私は思う。アン・ハサウェイとジョセフ・ゴードン=レヴィットの扱いには心躍らされるものがあるし、上で悪役をこき下ろしたが、全体として決して酷い出来と云うわけではない。くだんの冒頭のシーンでは宮崎駿の『天空の城ラピュタ』の冒頭や『博士の異常な愛情』のスリム・ピッケンズの落下シーンを想起させられたが、こういった引用っぽい部分は非常にさりげなく慎ましやかな演出がなされており好感が持てる。慎ましいということでは、ラスト近くの核爆発の描写もそうで、ある種の繊細な配慮の証跡がうかがえる。
あと、音楽はうるさ過ぎ。
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