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[コメント] 十三人の刺客(2010/日)

松方弘樹の、思わず見惚れてしまう刀さばきを見るにつけ、殺陣というのはまさしく「芸」であることを痛感する。松方に比べると伊原剛志のぎこちない居合など所詮真似事に過ぎないことが見透けてしまう。
緑雨

しかし、地味な参謀役に徹していたはずの松方があんな段違いのパフォーマンスをみせてしまうのはややバランスを乱してしまっている気もするが…(本人はとても気持よさそうだけど)。

さて、十三人対三百人超という多勢に無勢な状況を打破するに、知略を巡らせたトラップを仕掛けて追い込む件りは観ていてワクワクさせられた。特に、松明を背負わせた猪に攻撃させるあたりの、画面から発せられる高揚感とか(CG処理なんだろうけど)。が、すでにご指摘のある通り、三百人のうち五十人くらい倒したところでポジショニング戦略は終了して、延々と個々人の戦闘能力頼みの展開になってしまうあたりは自分も少々物足りなく感じた。

稲垣吾郎の狂気を呈示する手法はあまりスマートとは言えないが、その非道さを印象付けるには十分であり、それが後半の大戦闘場面における感情の爆発力につながっているのは間違いない。が、あれほどの数の手勢が何故斯様な冷酷な暴君のために生命を投げ打つのか、「主君に仕えるのが武士の運命」という精神主義だけで説明してしまうのはやや弱い気がする。彼らを恐怖で縛り付ける稲垣の狡猾さが表現されて然るべきでなかったか。また、戦闘場面においても稲垣の狡猾さ、非道さをもっと発揮させる件りがあってよかったのではないか。

面白い作品であることは確か。ところどころ目を背けたくなるような「趣味の悪さ」も作品の個性になっている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tkcrows[*] 水那岐[*] おーい粗茶[*] 3819695[*]

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