[コメント] サブウェイ123 激突(2009/米)
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トニスコの演出力にはもはや疑いを持っていないので、ヒップホップな映像処理もやりたいようにやってくれという気分。オリジナル版の段取りも省略して、メインクレジットが終わったらすでにトレインジャックが終わっているという手際のよさが気持ちいい。太ったおばさん車掌の気丈な態度が感動的だ。
トンネルの中にたった一両、車内灯だけで浮かび上がる客車というのも比類を見ないヴィジュアルだし、運転手や人質たちがニューヨーカーというくくりを越えた人間味を持って感じられるのもいい(「チェンジリング」の死刑囚、ジェイソン・バトラー・ハーナーが出ているね)。
管制室の人間ドラマもおもしろい。技師や管理職がまたそれぞれの職種なりの顔を持っており、それはNYPDのネゴシエーター、ジョン・タトゥーロにも言えて、天然ボケ風情を持つ切れ者官僚にぴったりの配役だ。
そう、この映画の登場人物は主役脇役端役も含め、外見が身分を語るわかりやすさを持っている。青年Aはスケートボードを持ち、青年Bはノートパソコンでガールフレンドとビデオチャットに余念がない。一番強そうな黒人乗客は元空挺部隊だし、市長にしても側近にしても見たまんまというタイプキャストだ。
しかしこれらがニューヨークという街の中に在ると、そこには大都会ならではの装い、虚飾というものが生まれる。ワシントンの収賄疑惑を会話バトルの要とするところなどはこの脚本の優れた部分の一つであろう(さすがは「LAコンフィデンシャル」の脚本家だ)。
トラボルタの人物像、元・ウォール街の投資会社社長にして、拝金主義が行き着くところまで行った風な思想哲学を持つキャラクター、その彼が、終盤、タクシーに乗る、橋を渡る。追い詰めるワシントンがその姿を目に留める、その偶然性にもご都合主義を超えた映画的な瞬間を感じる。彼らの最期のやり取りもいいし、"You are my hero"という今際の言葉もまた実に奥深い。
暴走した車両はトンネルを抜け、白日の元で爆走する。それが向かうコニー・アイランドという固有名詞は、ウォルター・ヒルの『ウォリアーズ』を連想させたが、帰宅後imdbを眺めていたら、これもトニスコがリメイクするようで、今からとても楽しみである。
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