[コメント] 西鶴一代女(1952/日)
気高く振るまっていた女が、不可抗力的におちぶれ、おちぶれることで次第に誇りを失い、易きに流れて行く過程
そこだけは人間的で良かった。
ただ「山椒太夫」でも感じたんだけど、封建社会で圧殺される人間性というモチーフは、さすがに現代から見ると大時代的すぎるせいなのか、そこでどんな理不尽な出来事が描かれても、ふーん、という印象を越えなかった。
この映画の時代の描き方も多分に恣意的だと思う。特に遊郭の場面の、田舎者が金を持っているのを見せた途端、下へも置かない扱いに豹変するシーンをはじめとした拝金主義を強調する演出など、あまりにも近代社会の問題意識を反映しすぎている気がしたし、身分違いの恋の咎で斬首される若侍が、福沢諭吉ばりに人間の平等を叫ぶのもなんだかメッセージ性が強すぎる気がした。後ろで溝口健二が言わせているのが透けて見えるというか。作品世界を自分の主張を描きやすくするために操作していることが露骨に感じられてしまった。 そういうことが巡り巡って物語のリアリティを損なってる気がする。
下手に政治的にならず、人間だけ描いていてくれればいいのに。
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