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[コメント] 青い鳥(2008/日)

野口を苛めていた少年は、それぞれにクラスに於いては一目置かれていたのだろう。それどころか、自他共に認める正義漢だった確率も大いにある。苛めが、けして悪意の産物ではないところに、苛められる側のやりきれなさが働く。
水那岐

自分が東北の都市に転校したとき、こちらに執拗に絡んでくるのは決まって正義感の強い少年だった。その頃の自分は、都心から来た人間の傲慢さを溢れさせていたのだろう、皆にあいつは酷い性格の男だ、とふれ回り、自分の中学生活は地獄と化した。しかし、自殺しようとは考えなかった。自分には生きがいがあり〔漫画執筆〕、成功するまでは死ぬに死ねなかったからだ。しかし、男女問わず苛めた奴らの顔は死ぬまで忘れられないだろう。勿論、正義のために征伐してやったと考える苛めっ子たちは、どうせとっくにこちらの顔など忘れているはずだ。

悲しいが、それが苛めの実態なのだ。

その子たちを忘れないでくれ、と阿部先生は言う。一種の真理ではあるものだろう。しかし太賀のように、キャラクターを見誤って自分の行動は絶対であり、法が命ずるならば命さえ捧げるといったタイプの人間は、他人の凋落など意に介さない。こういう男の頭脳内容を変革させるには、実際並々ならぬ努力が必要だろう。そのためには主人公の存在は必要だったろう。

だが、阿部を理解できた者たちは洞察力に富んだ者であろうが、そこまでに届く生徒はごく僅かだったようだ。これからも「あの」苛めを受け続けた女性徒は苛めを受け続けるのだろう。辛い話だが、主人公のなかに革命が生じたからといってそれが他の生徒に伝播するとは限らない。システムは根深く、重いものであるのだから。

(評価:★4)

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