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[コメント] 青い鳥(2008/日)

阿部寛が教室に入ったシーンから胸がバクバク言い始め、それは映画の終わりまで続いた。座りながらのマラソン体験の様。いや実際心臓的にはそんなくらいの運動量だったはず。
3WA.C

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







二昔前の学園ドラマとは違って、先生は生徒全員に自分のすべてを話そうとしない。だから生徒も先生が最後まで何を考え、どんな背景を持つ人間なのかわからない。それがいいのかな。なんとも重松清らしいっちゃらしいけど。思春期の子どもの性悪な部分を露悪的に書く作家だという認識なので、あんまり好んで読む作家じゃないんだけど、実際映像化するとこうなるのかと思った次第。

主人公が吃音という設定は、「言葉」の重みを伝えるためには有効な記号だと思うが、『金閣寺』『炎上』の主人公の心の闇を考えると複雑だ。

しかも主人公は決して「語ら」なかったけど、どうやら過去に担任した生徒が飛び降り自殺をしたという「痛手」を背負っているようで、その経験を生徒に伝えずに、自分の経験から得た信念として「言葉」と「眼差し」で伝えるという清々しさ。・・・と書いているが、こちとらかなりスレているもんで、「清々しさを表してるのね」と観てしまう。

思うに、阿部寛の一挙手一投足はすべて「作られた」ものだったのだ。

これを役作りといえば聞こえがいいが、姿勢や歩き方、表情まで込みで「あ、作ってるんだ」って客にバレたらだめだと思う。公式サイトには「自然体の演技」なんて書かれているけれど、あれが自然体ならロボコップだって自然体だぜ。

と、文句を言いつつも平成の学園映画としては空気をリアルに描けていると思うし、まとまりもある。

2年1組に、依然として存在する「いじめ」、その対象とされていた彼女のことを主人公は知っていたのだろうか。「青い鳥」よろしく去っていく主人公。影響はピンポイント的。クラスのほとんどの生徒は彼の「本気の言葉」を聴こうとしないまま。そして去りゆく主人公を追う者は、純粋な教育に燃える同僚一人だけ。どこまでも重松風味だ。平成風味ともいえる。

さて、ラスト。主人公はいつも読んでいた文庫本をバス車内で開く。

彼が常に読んでいた本。それは「石川啄木詩集」だった。

なんで書名をあきらかにしちゃうのだろうか。興ざめな、と思ったら、監修が松山善三かあ。いや、関連の有無はともかくとしてクレジットに彼の名前を見かけた瞬間、興ざめな書名バラシについて納得がいってしまったのだ。

最後に、主人公が学校を去る際に乗るバスの中に、夜のバス車内のシーンで出てきた高齢者とガキ3人が乗っていた。ああいうのって小賢しい演出だと思うんですよ。こちとらかなりスレてますから。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ぽんしゅう[*] tkcrows[*] セント[*] 水那岐[*]

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