コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 善き人のためのソナタ(2006/独)

ラストカットのたった一行の台詞こそがこの物語を救いあるものにしている。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最愛の人、クリスタ・マリア・ジーランドが苦しみ・悩みながら自殺した。

もし、ここでこの物語が俯瞰の画のまま終わっていたら、とても救いのない物語となっていただろう。

4年7ヶ月後、ベルリンの壁が崩壊。

さらに2年後、全てを知ることになった劇作家ゲオルク・ドライマン。

彼は、完全監視下にあって嘘の報告書を仕上げたHGW XX/7の正体が国家保安省シュタージのヴィースラーだと知り、一度は面会を試みようとするも、掛ける言葉がみつからない。

シュタージに盗聴されていた事実。

そのシュタージに属するヴィースラーが自分とクリスタを庇ってくれた事実。

そしてクリスタが自分可愛さに密告した事に対し自責の念に駆られ自殺してしまった事実。

彼が、これら全ての事実を消化するには更に2年の歳月を要したとしても不思議ではない。

ようやく本を著した彼が『善き人のためのソナタ』という著書の冒頭において、ヴィースラーに対して初めて感謝の意を捧げる。

********************************************************************************

「ギフト包装は?」と尋ねる書店の店員に対し、ヴィースラーが答える。

「いや、私のための本だ」

おそらく事情を知らない店員は気付かない。この言葉が持つ真の意味を、重さを。

彼・ドライマンとヴィースラー、そしてこの映画を観た僕たちだけが知っている。

この映画が、このたった一言で救われた気がした。

このエンディングは僕の中では5本の指に入る。

パーフェクト。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)tomonori サイモン64[*] chokobo[*] あちこ[*] シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。