[コメント] 東京暮色(1957/日)
デジタル修復版にて再観賞。
妻に逃げられた父、幸せな結婚に失敗した姉、秘密を抱えた妹。それぞれスネに傷を持ち、お互いに強く出られず相手のフトコロに飛び込んでいけない。微妙な緊迫感漂う茶の間での会話も絶品。
麻雀屋、深夜喫茶、ボロアパート、支那そば屋、警察署…往時の大衆風俗と生活が垣間見られるのが興味深いが、そこで繰り広げられる人間の業の深さは現代と何も変わらない。小津作品にしては暗すぎるとの評価も頷けるが、何のことはない、人間の業を描き続けてきたのが小津という作家ではなかったか。
捨てた娘に受け入れられることを都合よく期待してしまう母親。麻雀しながらおちゃらけたナレーション口調で陰口叩く悪友たち。必ずしも悪意がなくとも、時として人間は残酷な仕打ちをしてしまうもの。そんな冷徹な観察眼に裏打ちされた描写が観ていて痛かった。
軽妙なテーマ曲がノワールな世界に被せられるのが容赦ない。
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