[コメント] サマータイムマシンブルース(2005/日)
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クラスとかサークルで、妙にノリのよい代とか学年の時ってあるでしょ。申し合わせがあるわけじゃないのに、人が集まるとみな何か空気を読んで自然と面白いことが起きる。変幻自在に入れ替わるボケとツッコミが飛び交い、意味不明なフレーズがはやったり、世の中の動きとは独自に展開される「内輪ウケな世界」は、誰からも評価されないけど、実は「芸」なんだよなあ。
この作品、タイムトラベルものとしての構成も相当面白いんだけど、私にとっては、SF研(+カメラクラブ)のノリのほうが面白かった。私は彼らの醸し出すやりとりのこなれた感じにくぎ付けになってしまった。後で、この作品には元になる芝居があったことを知ったのだが、一からこのノリを考え出せるものじゃないと納得した次第です。
タイムパラドックスものは、大きく2つにわけると「過去が変わった分、未来(現代)がどんどん変化するタイプ」と「過去が変わっても、未来(現代)で結局辻褄があってしまうタイプ」とあると思うのだけど、後者の「閉じモノ系」っていうのは、落ちるべきところに落ちる、というシニカルな視点の物語になりがちだと思うのだが、本作は全体的にやってることがくだらなく、ブラックな感じはせず、ひたすら愛らしい。カメラクラブの女の子たちは、タイムマシーンを「ふーん」と見ているだけで、触りさえもしないというゆるさ!
この何もしない女子2人。彼女達がいなければ、夏の男だけのサークルの、主に部室だけで展開する話なんて10分と耐えられまい。作品の空気に妙にとけこんでしまい、ただふつうの女の子という役ながら、時おりみせる微妙な表情が冴える上野樹里。未来ではコンビニになるという映画館の前で「ここ昔おかあさんがよく通っていたらしいんですよ」という田村くんを見つめる時の表情は、とても言葉で説明できないような微妙な表情で、その瞬間私に「おかあさん」であることをわからせてくれたのです。これはもう監督も「いただきっ!」と叫んだに違いありませんね。めがねの奥であのきりっとした瞳を投げかけてくる真木よう子も存在感あります(胸も)。この作品におけるタイムパラドックスの「すべては運命に収束していく」という世界観や、田村君の正体についてを、甲本とのツーショットで彼女に語らせるというのも、彼女のクールフェィスが効いていていい配役と思います。
「決められたわくにすべりこむ」っていうのも、言い方をかえれば「目標に向かって生きる」ってことでしょ。教訓もあって(笑)、ばかばかしい仲間、好きな女の子が近くにいて、写真部じゃなくてカメラクラブ(←個人的にポイント)。よい青春ものでした。
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