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[コメント] ゴジラ(1954/日)

私が生まれたのは、『ゴジラ』シリーズが子供向け映画として円熟していた頃。その先入観が私をこの映画から遠ざけていた。この映画はまさしく万人向けエンターテイメントだった。戦後「9年」という時間と古生物学者について→(02/05/19)(2004/10劇場鑑賞)
秦野さくら

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







*(大人(記憶が明確なうち)になってからの)ゴジラ映画初体験

 ちらりちらりと現れる<敵>。なかなか全体像を見せない<敵>に焦らされながら、否応なしに私の期待は高まる。そして映画の中盤も過ぎる頃、やっとあの名曲とともに巨体が姿を現す。そして破壊のオンパレード・・凄い。しかし、それも人間ドラマの一部に過ぎなかったとは!OH!!・・芹沢、カッコよすぎます。

 都市の破壊も人間ドラマも凄まじい。目の前で両親とともに破壊される家を見ながら絶叫する子供、火の手に覆われた東京の街と逃げ惑う人々・・否が応でも『ゴジラ』制作九年前の戦争を連想させる。「さようなら、皆さんさようなら」と命をかけて実況中継するアナウンサーの姿は、まるで特攻隊員さながらであり、凄まじい。そして、ゴジラへの攻撃シーン。街中を走り回る戦車、大砲ドンパチ、日の丸飛行機・・戦争シーン、まんまではないか。実際、円谷氏も「もう、日本では飛行機を飛ばすことができない、せめて映画の中でとばそうじゃないか」と撮影助手の有川に話したという。

 戦争が終わってから9年。戦争を過去として捉えるには、長い時間なのだろうか、短い時間なのだろうか。両親共々戦争を体験していない私にとっては良く分からない。ただ、<私にとっては>この映画には少し違和感を覚えた。9年という時間は鬼畜と覚えこまされたアメリカの文化を模倣し、敵をアメリカからゴジラ=水爆実験に置き換え、痛々しい過去をリアルな特撮で描き出すのに十分な時間だったのだろうか。

しかし、実際この映画は、空前の大ヒットを飛ばした。そして、2年後の1956年には、「もはや戦後ではない」という言葉が人々の間で流行する。10年前の失恋すらトラウマになっちゃってる私にとっては、戦後復興を生きた人々の逞しさを思い、少し羨ましさえも感じてしまうのである。

蛇足)

*「オキシジェン・デストロイヤー」という命名に失笑してしまった。今なら「酸素破壊剤」としたほうがかっこいいな、うん。

*私が古生物学者の卵候補だったこともあり・・ここで現実なら「古生物学者」は登場しないだろうなあ(苦笑)。生き物に遭遇したら、前線に立つのは「生物学者」でしょう。ジュラシックパークetcで古生物学者って生物体を扱うイメージがあるんだけど、実際はほとんど地味〜に「石」を扱う仕事なんですよね(^_^;

(評価:★4)

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