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[コメント] その男、凶暴につき(1989/日)

「たけしって映画をすごく勉強してるよね」と、観終わった後感想を言ったら、「あいつ滅茶苦茶だよ」と監督志望の奴に言われた。
ごう

その後、ズームがどうだとかパンがどうしただとか説明を受けた気がする。

当時も今もそんな勉強などしていない私は反論など出来る訳もなく、彼の説明にとても納得はしていなかったが、「ふぅん」とただ聞いていた。

でも確かにどこかで観たようなシーンもあったし、何よりすんなりと映画の世界に入っていけたのだ。そして面白かった。だからこのように言い換えてみようと思う。

「たけしって〔人に見せる〕ってことがよくわかってるよね」

そりゃそうだよな。その世界のトップクラスで長年演り続けている人なんだから。

よく「北野武」と「ビートたけし」をわけて考える人がいるが、あれは「ビート〜」という記号がもつイメージ的なものを排するための単なる戦略であり、およそ彼が「観客」と言われる人達に何かを見せるときは、それがトークであれネタであれ、映画であっても全て確信犯的にウケることを狙って行われたものだと思う。

ただこの頃はあまりにも「ビート〜」の記号が持つパワーが強かったのだろう。そして今でもそのイメージは日本では完全に払拭されていない。もちろんそれは仕方の無いことである。テレビをつければそこにいるのだから。そう考えれば彼の作品が海外で先に評価されたのも充分頷ける。

さらに彼は似たようなテレビの世界であれだけの成功を収めた人物なので、同じような成功を映画でも期待されてしまう。従って興行成績が振るわないと他の監督以上に「失敗した」と言われているような気がする。

撮った作品が常に万人に受け入れられ、同じように高い評価を受ける監督はいない。私だって彼の「BROTHER」は少々期待外れだった。

だが、それにしても彼の評価は低すぎはしないか。この作品などはもっともっと評価されていいと私は思う。

もちろん、監督・北野武も。

(評価:★5)

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