[コメント] ヴァイブレータ(2003/日)
女も男も、人物設定はベタと云えばベタなのだが、ベタなりに徹底的によく考えられて造形されている点は感心する。寺島も大森もその掘り下げられたキャラクタを十分に表現できていると思う。
女の主観がキャプションで表現されるとことが特徴的。映画表現としては反則と言われても仕方がない手法だとは思うが、このキャプションによって、女の心情のみが観客に説明され、男の心情は想像するしかない、という非対称の構造が創出される。このアンバランスさが、行きずりの男女による腹の探り合いという状況がもたらすサスペンスを醸成する。
また、長距離トラックという、仕事場であり生活空間であり同業者とのコミュニケーションの場、そして、情事の現場ともなる特殊な空間が妙味を生む。そこで語られる、フリー運転手のビジネス実態や、無線通信のスラングについての解説などが面白い。細部を語るほどリアリティは増すのである。
以下、蛇足。製作は2003年。これを書いている今は2010年なので、わずか7年しか経っていない。が、なぜか「一昔前」の映画であるように感じられる。都会人の孤独を描いた作品だが、この映画にはまだ救いが感じられる。わずか7年で、救いに対する諦めが社会に充満しているのか。
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