あの甘く垂れ下がる目尻は泣かした女達の呪い…　と勝手に思い込んでるほど私が彼に抱くイメージには 「女」という言葉がついてまわる。　（その次に「軽量」、次が良く言って「自然体」？　。） 恋愛モノを得意とする俳優・女優は数多くいても、かなり楽しみながらそのまま地でやってんだろう、といつも思うのが このヒュー・グラント（とリチャード・ギア）である。　

彼が出演した『ノッティングヒルの恋人』、『ブリジット・ジョーンズの日記』、私はこの２つとも好きで★４をつけているが、 「ヒューさまステキ」となることはまずなかった。なってたまるか。…ってどこがで意地になっていたかも。 でも、この映画の中の彼に対しては何度も「ヒュ、ヒューさ…」と言いそうに…　、うっ。 劇中で見れたプルンとした下っ腹を見たときでさえも「ヒュ、ヒューさ…」と言いそうに…　、うぅっ。

主人公は親の残した財産で暮らす３８歳。　社会に出ていた人がある日突然金持ちになって、これからは悠悠自適に… ではなく、物心ついたときにはもう遊んで暮らせる環境にあって社会に一度も出たことが無い男。 そういう暮らしがダメってわけじゃない。その人の自由だし。　でも、進んで自分と関わりを持とうなんて　　　……思うかなぁ。

若いときだったら何かと重宝できる相手。　お金もあるし、時間もある。この人だけはいつでも都合をつけてくれる相手。 恋人でも友人であってもとても都合のいい相手。　でも、これがずっと続いてしまったら…。

周りでは家庭を持つ者が増え、自分もそうなる。　でも相変わらず自由気ままに暮らすあの人を見て、羨ましい気持ちと 妬む気持ちなどが混ざり合って、「いい歳こいてどうしようもないヤツ」というイメージが出来上がっている。 あたかも自分達の方の生き方が正しいんだと言わんばかりに。

　この主人公もきっとそういう風に扱われていたんじゃないだろうか。　若い頃はたくさんの友人がいたけど、歳を取るにつれ 少なくなり、今ある交流といったら家族とお金が絡んで成り立つ交友関係のみ。　それを本人は「島」と表現して オレはこういう生き方が好きで、それで満足なんだ、とこっちも自分を正当化しているように。

そんな「島」に１２歳の少年が遠慮なくずけずけと入ってくる。はじめは戸惑っていた主人公だが、 いつしか自分にとって大切な存在となる。今まで出会った人たちとは明らかに違う感情を抱きながら。

　少年も情緒不安定な母親を持ち、決して態度には表さないようにしているが、心の中では常に不安に怯えている。 そんな少年が心許した相手は、自分を同情や哀れの目で見つめる人たちよりも、　他人との関わりを自らは望まない、 けれどもなんだかんだいって黙ってそばにいてくれるような主人公のような男だったと。

この２人の演技の「間」は実に上手いと思う。　どんどん心を通わせていく２人。　話すことは少なくても いるだけでお互いを解っていくようなかんじ…。　マーカスが通いつづけていくうちに、玄関のベルを待たずにドアを黙って 開け、招き入れるシーンあたりでグッときた。　　ニコラスくんはヒュー相手に充分がんばってらっしゃる。

このマーカスに出会ったことでウィルは、いままでの自分とは違うかけがえのないものを見つけ、 これから内面的にも少しずつだとは思うが、どんどん変わっていくのだと思う。　こんな出会いができたこと、 この２人の男はこれからは自分で切り開いていく人生を堂々と歩んでいけそうな気がする。

　人が「島」であるという考えは私もそれでいいんだと思う。ずっと陸続きの国で永遠生きるよりは 離れるところは離れていないと。そしてその「島」でだけは自分が王様でいないと。 でもそれは主人公が最後に悟ったように、「孤島」じゃなくて「諸島」でなければダメだ。 小さい島がいくつも集まって行き交うことも、ほどよく距離を保つことも可能。 人はみな諸島。　　うん。

　で、日本人ならやっぱり小笠原諸島。　　　　　　　なぜに小笠原？？　　

…父島も母島もあるからヨ。　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　あれー　どうもありがとうございました。