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[コメント] ミュンヘン(2005/米)

ジャン・ピエール・レオみたいなヤサ男がバンデラスの形相になるまでの物語
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







例えば冒頭のニュースシーン。小説なら「その悲劇を国中が悲しんだ。」という一文で足りる。それを映像で表現するのは大変困難な作業だ。それをやってのけた演出の巧さ。こんな見事なニュースシーンは、「そのニュースは世界中を駆けめぐった。」ことを表現した『パトレイバー2』以外で見たことがない。これホント。 一方でストーリテリングの巧さ。例えば、むやみに食事シーンが多いのだが、最終的に男は食事の誘いを「断る」ことで終焉する。こんな見事な食事の使い方は森田芳光の『模倣犯』以来見たことがない。これは嘘。

久しぶりに、ほんっっっと、久しぶりに、演出の巧さとストーリーテリングの巧さが噛み合ったスピルバーグ作品。素直に面白かった。緩急の付け方など神業に近い。

「国家と家族」の物語なのだが、「一人の男が狂っていく物語」とも読み取れる。 言い換えれば「魂を喪失する物語」であると同時に「魂を得る物語」でもある。これは『狼よさらば』の系譜だ。ブロンソンだ。 素直に面白かった理由は、政治的メッセージをまるっきり無視しても、充実した物語だからだ。それ以前に、ハードな『ミッション・インポッシブル』的で面白かったんだけどね。

しかし、『狼よさらば』との大きな違いは、前者が「ある信念に憑りつかれた男」の物語に対し、本作は「信念が揺らぐ男」の物語である点。 だが、国家を守るという「信念」が揺らぐ代わりに、家族を守るという「信念」を得る物語だと言ってもいい。

それにしてもこの映画、True storyをbaseにしたのではなく、True storyにinspireされたのだと冒頭で謳っているのだから(「真実に基づいた物語」というのは誤訳ではないが誤解を与えると思う)、事実をねじ曲げてもいいから、もっと短くてもいいんじゃないか、というのが本当に本当の素直な感想である(inspireは結果論らしいが)。いや、飽きはしないんだけどね。11人は多すぎる。『ミッション・インポッシブル』なら企画の段階でボツだ。

(評価:★4)

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