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[コメント] インターステラー(2014/米)

なんともチグハグな映画、オレは戸惑い、あるいは苦笑し、あげく「ノーランやっぱりあんたはラッキーパンチャーなのさ」と嘲りの言葉を投げかけるかもしれない
週一本

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







綿密な理学的宇宙空間プロットを提示しながら感情的な人間関係をことさら並び立てた時点でSFに求められるクールネスというものがあれば「2001年宇宙の旅」に遠く及ばず、ユニークで大胆な時間軸の設定も結局は父親と娘の感傷を中心としてしまうために「バックトゥザフューチャー」を知る自分にはそれが矮小化とさえ感じられる、壮大な環境設定が収束する先を個に定めていることのギャップに戸惑い、あるいは苦笑し、あげく「ノーランやっぱりあんたはラッキーパンチャーなのさ」と嘲りの言葉を投げかけるかもしれない

だがしかし、ホントに、だがしかしってやつで、これは、オレは、この作品が、映画っていうものがある種の範疇をさすのなら、そりゃダイヤモンドに赤味噌を塗っちまったって事なんだろう、その範疇において、SF映画作品として多くの傑作に挑むに、いわゆる「物識り顔」というやつが決定的に足りていないのは分かっているんです、分かってますともオレにだって!

でも、だがしかしです、ホントに、だがしかし!これは愚かなんだ、もう眩暈がしそうな、こちらが呆気にとられ降参しかねないような完全な世界を作っておきながら(完全ってのは、もっとも完全に見えるってことだけど)、そこでノーランは愚かにも愛と希望を言い募る、しかも執拗に言い募る、食い下がる、「わかったよ!」とこちらが言ってるのにもかかわらず、「愛です、僅かですがコレが愛です!」って、これはもう愚直でしょう、愚直、愚直なまでに、ヒネリ無し!

しかしね、オレはね、泣きましたよ、あの五次元の本棚、親父が娘に必死に呼びかける、そりゃ言うまでもなくオレだって心のどこかで、いいや、心の大半、大部分でシラケて冷笑を浮かべあの場面を見ましたよ、でも、そこで、あんな五次元の部屋なんてものを作っておきながら、そこで親父に必死にモールスを送らせる、そのモールスは次第に強く俺の心だって打ち始めたんだ、だから不意に泣いた、嗚咽がもれた、モースルは、ノーランの愚直なノックは、いいや、奴の拳がついに俺の心を砕いたってことなんだ

前後してしまうが「プランAは大ウソ」、そこまできたときに「おっとここまで力任せに進んできたが、クールなBプランを採用ってこと?」なんて思いましたよ、でもやっぱり、ノーランは諦めない、オレが甘い、そうさ諦めっこない、ここから首根っこを押さえ、捻じり伏せ、さらにガルガンチュアへと引きずりこんだ、話し始めからもう2時間、呆れるよね、もう勘弁してくれって具合に

そうさ!おっぱじめたさノーラン!憑かれたような目で!口角泡を飛ばして!馬鹿かよお前!誰だってそう思ったに違いない!違いないんだ!

ドラマの為に愚かしいキャラクターや設定を用意する監督はいる、しかし、人を語るために監督自らが愚かになるなんて、そんな人いたでしょうかね?今までにいたんでしょうか?エキサイティングではあるが宇宙船やステーションなどは全てどこかで見たようだし、大げさもいいところの音楽演出、ああ、これは、借り物だらけ、借財だらけなのかもしれない、ダサいかもしれない、実際にあのモノリスロボはダサいだろあれ、そしてバッターが打った球がコロニーの向かいの建物の窓を割るとか今どきやらんだろあんな演出!

でもノーランはおかまいなしなんだ、むしろドヤ顔でやっている気配さえある、覚悟の上かはたまた無意識かやってのける、ノーランあんた天然?それとも分かってやってんの?(ダンケルクでは更に過剰に!!)

オレは思う、ダサさ愚さに怯まないのは、それはこの監督はその頭脳以上の情熱を映画に捧げているからだ、この人の瞬時の熱量とキレ味、それとは不釣り合いな不恰好さ愚かさ、それを俺はラッキーパンチと感じていた、でも違った、とんでもないハードパンチャーだ

これはオレに言わせれば、フェリーニの道なんです、21世紀に生まれた、なんとSFをいう舞台を使って人はあの道を作ってしまった、21世紀に人類はSFであの道を作っちまうんだ、あのザンパノの砂浜の涙を人間は宇宙と空想の空間で創ったんだ、無いに等しい可能性に挑んだ奇跡のお話、しかしオレにとってはこの作品の有り体それ自体が奇跡だ!まったく!磔の体が三日目に蘇るほどの奇跡ってやつだ!

くどくなりますが言わせてください、もう1/1スケールと言っていい超精巧なジオラマにピーナツバターを塗りたくったようなこの作品は愚かしいでしょう、ある種の範疇においてコレが「2001年宇宙の旅」にはるか及ばず「サイレントランニング」のほうが何倍もクールだろうし、人が織りなすドラマとならば「フィールドオブドリームス」にさえ劣っている

しかし、これは、その愚かゆえ愚直さゆえに人間という、愛というベクトルにおいて映画を超えて人類の示した仕事として史上の傑作だと言いたい

ノーラン、オレはオマエにそう伝えたいよ

(評価:★5)

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