コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] NINE(2009/米)

プロデューサーが勝利する企画映画だが、映画の決定的な肌理に疎いSO-SOミュージカル
junojuna

 フェデリコ・フェリーニの伝説の作品『8 1/2』にモチーフを得て、現代映画を牽引する女優陣の豪華な顔ぶれで圧倒するミュージカル映画である。この映画も同時期に公開されたガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』と同様にプロデューサーが満面の笑みを浮かべるであろう映画的に背徳の作品であるといえよう。本作の立役者、プロデューサーのマーク・プラットはブロードウェイミュージカルのベテランプロデューサーでもある。商業的なもしくはブロードウェイ的批評に毒された百戦錬磨のプロフェッショナルなのだ。この映画の魅力は何よりも現代女優のカタログ的共演であろう。ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、マリオン・コティヤール・・・9人の内この3人を挙げてよしとするのは、この3人のセックスシンボルにロブ・マーシャルはいったいどんな演出を施し、女優の美を打ち出すのかという興味があったからだ。ジュディ・デンチと言わないのはそのためだ。それくらい思い入れがあって観たい男の映画でもあるのだが、ペネロペのデカパンはあれでいいのか?時代性か?しかしペネロペなのだ。ニコールの存在感の置き所はよしとして、そこには遠慮というセーフティバントがあり、マリオンをジュリエッタ・マシーナとしたいのか?という無理に茶番が展開される。そう思えばこそ、グイド:マルチェロ・マストロヤンニは、ダニエル・デイ・ルイスではなくロバート・ダウニー・Jrなのだ。ルイスではパゾリーニでしょう。思うに、こうした映画的記憶を想起させる映画は、シンボルとしてのビジュアライズにある種の評価が生まれることにもっと研ぎ澄まさなければならない映画的偏差値があるのだ。プロデューサーはどうしても経済的にまつわるスキームに頭が行きがちだ。それであればこそ監督の立場にあるものが、プロデューサーを凌駕する映画の恐さを突きつけなければならない。残念な本作。プロデューサーはチョイスに命を賭けるしかないのだから、その点を踏み違えば未来はない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)3819695[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。