[コメント] オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013/米=独=仏=英)
回転するカメラ、レコード、ティルダ・スウィントンから始まるジャームッシュの新作は吸血鬼を描くだけあって艶やかな「夜」の映画になっているわけだが、どうにも照明の突出ばかりが目立ち、いささかショットが耽美的になりすぎてはいないだろうかと心配になる。というわけで序盤はダンスにもスローにも全く乗れなかったのであるが、
流れ行くデトロイトの寂れた風景がドライヴ中に映し出され、永遠の恋人同士である2人が廃墟の天井を眺める辺りから、次第に豊かな時間が定着し始める。その後ミア・ワシコウスカ嬢が登場するに至って映画はようやっと持ち直す。クラブでの光と官能性。タンジールでの黄色の光と色濃い影。その頂点はやはりヤスミン・ハムダンによる演奏シーンと思う。
それにしても、オーヴァーラップの多い映画で、小道具や設定、台詞、廃墟含め「時」に関する映画なのだろうか?総ショット数は850〜900程度。おそらくジャームッシュの中で最多だろう。
Only Lovers Left Aliveの意味は最後で明らかにされるが、どうも本作のジャームッシュはロマンティックすぎやしないだろうかと、私には思える。「リミッツ・オブ・コントロール」では主人公の所作、動きから、ミザンセヌその他すべてに至るまで綿密な統一が図られていたが、今回はあまりに脆弱すぎるのではないか。一回観た限りでは、彼の作品で最も愛着のない映画になりそうである。
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