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[コメント] ローラーガールズ・ダイアリー(2009/米)

クリント・イーストウッドロバート・レッドフォードシルヴェスター・スタローンメル・ギブソンジュリー・デルピー。優秀な俳優は自動的に優秀な演出家になってしまうものなのだから、ドリュー・バリモアの初監督作に対する不安などはじめからない。アメリカ映画のド真ん中を行くふてぶてしい傑作。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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エレン・ペイジのチームメイトであるクリステン・ウィグ、バリモア、ゾーイ・ベルの笑顔がもたらす幸福感は何物にも代えがたい。ペイジに至っては笑顔のみならず、誇張でなしに全表情が感動的だ。(いつも同じことを云っている気がするけれども)よい映画がすべてそうであるように、これもまた「顔」の映画である。バリモアの顔面選択眼の確かさは男性陣にも及び、コーチのアンドリュー・ウィルソン、実況のジミー・ファロン、バイト先の上司カルロ・アルバンは本当にいい顔。また幸福感ということについてならば、パイ投げ乱闘シーンとミスコン控室にチームメイトが集合するシーンのそれを特に挙げたい。集団の画面は幸福感も格別だ。畑やプールなどロマンスの絡んだシーンもよくできている(プールの水の影が壁面にゆらめくカット!)。

映画以外の分野からの参照を強く感じさせる構図・色彩感覚を「映画」に落とし込む技術にかけて、ロバート・ヨーマンは現代随一の撮影者と認定してもよいのではないか。画面造型に関しては彼が主導したところがもちろん大きいのだろうけれども、たとえば選手選考会に向かうためオースティン行のバスに乗り込むシーン、車窓外の風景に漂う得も云われぬ詩情は一撮影者に任せられる範囲を越えた何かのように思える。

まだまだ触れたいところは多いが、バリモアが稀有の映画的聡明さを持ち合わせた演出家であることを示すものとしては一点だけ、画面内に(私の記憶が確かならば、一台も)「携帯電話」を持ち込まなかったというところを指摘しておく。この聡明さがどれほど驚異的なものであるかについては、「映画の感情」はいかに持続し、いかに途絶えてしまう性質のものであるかに関心を持つ観客には説明を要しないだろう。

監督業を続けていく限り、バリモアがこれ以降いくつもの傑作をものにするだろうことは疑いない。ひとつだけ注文をつけるならば、前半のチームのポンコツぶりはもっと強調して演出してもよかったのではないか。昔も今も私は『がんばれ!ベアーズ』主義者なのだ。

(評価:★4)

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