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[コメント] プラトーン(1986/米=英)

もう何と云ったらよいのか。この際お話やイデオロギーに関してはノー・コメント。それでもやはりこれはダメだ。光を操れていないではないか。「暗さ」を志向するならなおのこと光の操作には厳密さが要求されるのにもかかわらず。
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**ネタバレ注意**
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そのことは、端的には「黒人をよく撮れていない」ということに顕れている。もちろん素人の私には詳しい技術的な事柄は分からないのだが、白人と黒人では肌の色が違うのだから、当然ライティングの仕方にも違いが出てくるのではないだろうか。この映画はその辺りの基本的と思われる事柄に無頓着というか、技術の未熟さを感じさせてならない(これは「照明における白人優位主義」の問題と云ってもよいでしょう。大仰に聞こえるかもしれませんが、そういったところにこの作品の不誠実さが顕れているように思えるのです。また、ストーンが照明自体を手段として「戦場においてもれっきとして存在する白人と黒人の階層構造」を表現しようと目論んでいた、ということもありえないでしょう。なぜなら、黒人俳優に対してよりは多少マシというだけで白人俳優に対するライティングも相当酷いからです。要するに俳優への敬意が欠けているのです)。

それでも精一杯の擁護を試みるとすれば、「ロバート・リチャードソンは多くの場合、少ない選択肢からベターな画を選びとっている」と云えなくもない。この云い分もかなり苦しいのだが、そもそもその選択肢自体にろくなものがないので、いずれにせよよい映画にはなりようがない。撮影者に対して少ない選択肢しか与えられないこと、それがすべてろくでもないこと、この責めは当然監督たるストーンが受けるべきものだろう。

そのような監督だから、ウィレム・デフォーの最期をヘリコプターから目撃するという「見せ場」のシーンにおいて、むやみに悲壮な音楽をかけた上にスローモーションにするなどという演出を平気で行えてしまう。「映画監督」という職業はこうした愚行がまかり通ることを防ぐために必要とされるのではなかったのだろうか。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Sigenoriyuki ナム太郎[*]

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