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[コメント] プラトーン(1986/米=英)

誤解を恐れずにいうと、(うまく撮りさえすれば)なかなか面白い映画だったのではないかと思っている。
ナム太郎

米軍による民間人の大量虐殺、暴行、麻薬漬けのキャンプ、味方同士の殺し合い、そんな現状に、母国に生きて還れる日ばかりをカウントする日々…。

今でこそ周知の事実となったこれらのことが、本作以前に映画という媒体で語られることは確かになかった。そういう意味で本作が特に本国の従軍関係者に衝撃を与え、多くの称賛の声に包まれた事実もわからなくはないし、そういったものを当時に正面切って描き、見せたという点においては、誤解を恐れずにいうと、(うまく撮りさえすれば)なかなか面白い映画だったのではないかと思っている。

が、問題は何を見せるかではなく、それをどのように見せるかなのだ。悲しいかな、当時のオリヴァー・ストーンには、前作『サルバドル』の例を挙げるまでもなく、その点が決定的に欠如しており、せっかくの題材が全て消化不良に終わってしまっている。だから、見世物としては限られていても、映画としてはチミノの『ディア・ハンター』やコッポラの『地獄の黙示録』のほうが数段面白く、見世物自体は多くとも、本作はやはりつまらなかったとしか言いようがない映画なのである。

たとえば、のちに名手と謳われるロバート・リチャードソンの撮影が、その稀有な技量を全くといっていいほど発揮できずに終わっている点についていえば、同じように陽にカメラを向けるという行為にしても、そんなものは何十年も昔にもっと素晴らしい前例があるのにとがっかりするしかないし、トム・ベレンジャーウィレム・デフォーの使い方にしても、あれでは2人の好演が勿体無いとしか言いようがない。特にデフォーの最期のシーンをあれほど大仰に撮る必要性がどこにあるというのか、私には全く理解できない。あんなものが唐突にあの時間帯に現れるものだから、これ以降の物語はあからさまに混乱をきたし、せっかくのベレンジャーの個性も有効に作用しなくなってしまった。あと大仰といえば、あの垂れ流しの音楽も何なんだと思うしかない。

(評価:★2)

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