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[コメント] うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984/日)

ラムとあたるに義理を欠いちゃぁいけねぇって話です。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 すげーなーこれはすげー作品だなー押井守ってすげーんだなぁと思って見てたんですが(私にとって初押井作品です)、たったひとつのシーンに引っかかってしまったので「★-1」。

 夢邪鬼からポンッとラッパが飛び出すシーン。あの何の理由もなく飛び出してしまったラッパのおかげで、この作品は台無しになってしまってると思います。

 パラレル、ループ……現実を立脚点にしてそれらの「仮想世界」に巻き込まれる物語をつくる場合、その仮想世界の「創造」と「破壊」のプロセスには絶対的なロジックが必要だと思うんです。「なぜその世界に巻き込まれたのか」「どうやって脱出するのか」──そのふたつが、こういった物語の核になる部分で、そこをいかに説得力を持って描けるかで作品の「質」のようなものが決まってくるんじゃないでしょうか。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』において、「創造」のプロセスは非常に説得力があって、みんなが知ってる「ラム」と「あたる」というキャラクターの本質的な解釈にまで踏み込んだ見事なものだったと思います。だからこそ、私たちは「ラムの夢」という世界にどっぷり漬かって不安と高揚を感じることができた。だけど、いざ「破壊」の段になってアレはないでしょう。興奮したらラッパ出ちゃった!しかもあたるの手元に飛んでいっちゃった!びっくりしてカラクリ教えちゃった!……って、それじゃ納得しないですよ。もっとちゃんとプロセスを踏んで論理的に壊さなきゃ。「仮想世界に巻き込まれる」のに理由が要るように「現実世界に戻る」のにだって理由が要るんです。「出ちゃった」じゃダメなんです。

 これ、私はイイカゲンな作劇だと断じたいです。手抜きだと。だってこの作品は高橋留美子のキャラクターを借りて好き勝手に世界を作り出した物語じゃないですか。だったら、せめて自分が好き勝手に作った世界くらい、責任を持って壊さなきゃならんと思うんですよ。広げた風呂敷は引き裂かずに、自分で畳んで持って帰れって話です。都合のいいトコだけ原作のキャラを拝借して、自分の作った世界とはナァナァに訣別ってのは、作家として通らんですよ。「ちゃんと作ってちゃんと壊す」。そこまでやって初めて、作家の独自性とか独創性とか呼べるモノになるんだと思うんです。

 それ以前に、せめてもの「ラム」と「あたる」という秀逸なキャラクターに対する誠意っての、これじゃちょっと足りなくないすか。

 そのシーン以外はむちゃくちゃ面白いので★4。

(評価:★4)

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