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[コメント] ビヨンド(1980/伊)

ずいぶん考えたが、ルチオ・フルチはデタラメなのではなく、非常に優れた映像作家であると(個人的には)結論が出た。
Soavi

この映画は、『マッキラー』とならんでルチオ・フルチ作品の頂点ではないだろうか?ひたすら痛々しい残酷シーンが続くが、その痛みに対して監督は悲しみをこめた眼差しを向けているように感じられるのだ。フルチはサディストではない。この映画で繰り広げられる出来事は、世界が根本的に苦しみに満ち、ちょっとした人間の過ちから「邪悪」が噴出してくることを示しているのだと思う。そういった世界を、フルチは苦悩と悲しみにもだえつつ映像化する。そうせざるを得ない何かが、フルチにはある。映画冒頭で画家シュヴァイクは、「地獄」を描いたがために村人のリンチを受けて絶命するが、彼こそフルチ自身ではあるまいか。

またこの映画では「眼球」がやたらと破壊されるが、これはこの映画がもはや「目」で見ることができない世界へと向かっていることを、暗示しているのではないだろうか。もっとも恐ろしいものは、目で見えるスプラッター・シーンのさらに奥に隠されているのか。いずれにせよフルチは、自分のフィルムで自らの世界観・信条を明確に伝えることのできる、稀有な映像作家なのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ExproZombiCreator[*] ねこすけ kawa[*] クワドラAS[*]

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