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[コメント] アイデン&ティティ(2003/日)

少し甘く、4点。ロックンロールとは、自分と闘い続けることだという至極まっとうなマニフェスト。(03.11.06@東映)
movableinferno

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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四畳半ロック、という言葉があったが、この映画はさしずめ四畳半映画といったところだろうか。しかし、自分のことすらままならなくては何もはじまらない、と言うか、人は結局自分のことしかできないのだ、という意味で、四畳半映画大いに結構、と言いたい。

そして中島は日本のロックンロールを一夜にして変えたりなんてできないのだけど、それでも「自分のことをしっかり捕まえる」という偉業をやってのける。自分のしたいことはなんなのか、自分のやらなきゃいけないことはなんなのか、自分にふさわしいあり方とはなんなのか、自分のいちばん大事なものとはなんなのか。そして、ロックンロールとは、<状況に流されて歌いたくもない歌を歌ったり、好きで好きでたまらない人がいるのに人気者だからというだけですり寄ってくる女の子とのセックスで不安を紛らわしたりしてしまう>自分自身と闘い続けることなのだということに気付く。

この映画はある青年がそうやって自分を捕まえるまでの青春の悶々をとてもとても生真面目に描く。それはほとんど愚鈍であることと表裏一体であったりするのかもしれないが、それこそ愚鈍なくらい生真面目なわたしはその誠実さに胸を打たれる。

そして、中島に扮する峯田和伸くん(くん付けで呼びたい)のたたずまいにはこの映画のエッセンスが凝縮されている。あのアフロもメガネもジャージも笑顔も泣き顔も「そのもの」だ。彼を主演に据えた時点でこの映画は九割方成功だ!と思えるくらいすばらしい。

また、その登場には笑ってしまった「ディラン」は、その存在意義に笑らかす意図など微塵もなく、ド本気でこの映画における神様であり、このようにしてボブ・ディランと出遭わせてくれたこの映画に感謝したい。

ただ中島の彼女があまりにも正しいことばかり言う人で、かつその物言いも木で鼻をくくったようで、かなり以上鼻についたのだが、でも、中島が彼女のことを好きで好きでたまらないって言うんだからそれでいいじゃないか、なあ中島!

(評価:★4)

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