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[コメント] さよなら渓谷(2013/日)

同じ吉田修一原作で作風にも通じるものがある『悪人』とどうしても比べてしまうが、やはりシチュエーションがよいのだ。プレハブ長屋、急勾配、清流と渓谷。この静謐な場に佇んで暮らす真木よう子大西信満のリアリティ。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そしてそれがアブノーマルな罪と罰の世界観へと踏み込んでいくスリル性。

素晴らしいと思ったのはオープニング。朝方寝床でまぐわる二人、訪ねてくる女、オフスクリーンでの騒がしい人の声、やがてそれが隣家への取材に押し掛けたマスメディアであることが判る。この鮮やかなる状況呈示。(そういえば『悪人』にもメディアスクラムの描写があったな)

或いは、大西が隣家の女と関係があったことを疑われていることを真木が知った直後、大西が真木の肩をマッサージしたり食事を作る役目を申し出たりやけに優しいそぶりを見せることで、疾しさを観客に刷り込む演出など。

ただ、プロットの奇異性に演出が負けてしまっている感はある。回想シーンとの繋ぎもスムーズさに欠けている。特に中盤以降、真木と大西の二人に閉じた世界に焦点が収斂していく展開は致し方ないにしても、視点が単線化してしまって重厚さを出すにはもう一枚二枚足りない。せっかくの大森南朋も語り部以上の存在になり得ていない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] 3819695[*] セント[*] けにろん[*]

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