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[コメント] ロード・トゥ・パーディション(2002/米)

この六週間で、父親はいったい何を教えたのか?息子はいったい何を教わったのか? ファック! カタギに媚びてギャング映画作るんじゃねえ!!(蜂の巣にします。この映画が好きな人は読まないでください。)
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人を殺さなかった息子、息子に人を殺させなかった父親を美しく描いた結末だが、果たしてそれは美徳であったろうか?

仮に彼らがカタギであったなら、そうだろう。だが父親も息子も裏社会に足を踏み入れ、二度とは抜け出せない所にまで来てしまっていたはずだ。もし父親が本気で息子を裏社会から脱却させようと思ったなら、彼が教えるべきは“家族を殺された苦渋を飲み込んで復讐を諦めること”ではなかったか? それが(たとえ息子自身が望むところではなかったとしても)ギャングの親や組織に養われ、他人の犠牲の上に生きてきた息子にとっての宿命であったろう。ところがこの父親は、自ら復讐を成し遂げていくばかりか、その過程で息子に犯罪の片棒を担がせ、(間接的にであれ)手を汚させた。そう、この時点で息子を引き返せないところにまで連れてきていたのである。

それなら最後は、息子に、父親と自分の命を奪わんとする問答無用の外敵に対し自らの引き金を引く強さを身に付けさせてこそ、彼は父親としての教えを全うしたことになるんじゃないのか? カタギの俺だって「殺されるぐらいなら、殺せ」と親父から教わって育ったよ! 正当防衛は、憲法だって保証しているだろ! そんな屁っ放り腰で、別の追っ手に迫られたらどうすんだよ! というわけで、小綺麗な映画の化けの皮が剥がれた結末だった。

だいたい、完成度の高い映像は“非情の世界”の体裁を繕っていたに過ぎないってのは、序盤の息子が殺しを目撃してしまうシーンでハッキリと解る。このシーンでは、頭を吹き飛ばされた男がスローモーションで崩れ落ちるが、全くいらないカットだ。隠れる息子目線で撮っていたにもかかわらず、突然アングルが切り替わり、ずっこけちまったよ。ポール・ニューマン暗殺シーンも何やら綺麗に撮っていたが、『ゴッドファーザー・パート2』の例のシーン(ネタバレ自主規制)に比べたら、ちゃんちゃらおかしくて見ちゃらんねえ。おまけに、あれ程物語を引っかき回したボス(ニューマン)のくそったれ息子をぶっ殺すシーンが血糊だけとはどういうこった? あいつと主人公の擬似的兄弟間の確執が話の発端だったにもかかわらず、いったいどこに飛んじまったのやら。

非情さの体裁は繕いつつカタギ受けする立派な父親像にしたいというご都合主義が、この手の演出的綻びを必然的に産んでいったのである。そんな隙だらけの演出をだよ、あんなジュード・ロウの変態写真家、早い話が『アメリカン・ビューティー』のデジカメ小僧の二番煎じみたいな意匠で穴埋めしようだなんて、サム・メンデスの底も割れたな!

ギャング映画見るなら、『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』でも再見する方がましです。父子の物語を見たいなら、地味なせいでこんな生やさしい映画の影に埋もれてしまったデ・ニーロの『容疑者(海辺の街)』を強くお薦めします。あっちも無茶な設定を抱えた映画でしたが、よっぽど真剣に現代における父子の再生を問うていました。

(評価:★2)

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