老後が孤独で不安、家や貯金が少しぐらいあったって仕事で追い落とされて不安、バカ息子売れないバンドに夢中で不安、テレワーク移行時のどさくさで買った４Ｋのアマプラで久々映画見まくるようになっちゃっても不安、先々どうなることやら…子供たちの将来は…

という閉塞状況と、それを家族の間でも分かち合えないディスコミュニケーションのスパイラル。実は非常に重いところに立脚しながら、温水がチチンプイとは恐れ入る。このラーメン博物館ばりにチープな昭和写真館の照明が好き。４Ｋで見ると、デジカメ以降の最近映画は露出と解像度高すぎてテレビドラマに見え、フィルムの闇って魔法だったんだというのを遅ればせながら実感した。餅は餅屋、デジカメはテレビ局映画の方が相性いいのだろうな。バカバカしい若返りものがまさにシンデレラの魔法がかかったように映えて見える。多部ちゃんが走る。多部ちゃんがうなずく。多部ちゃんがウインクをする。見ようにはよっては窃盗にヴァイオレンス、ひったくりをしばいて、年配どもを説教したあげく、廣太郎を拷問と縦横無尽。あなた、本当にかわいいね…声量がちょいアレだけど、そこは脇役とかのフォローで許容範囲。何しろ要くんも走る。要くんが柱倒す。要くんが痴漢冤罪、マザコン全開…何て重層的なキャラ設定…なに、この極楽映画時間。『ハウルの動く城』よりよほど楽しい。延々続いてほしいわ…だがしかし、シンデレラの魔法は切れるのでございます。

でっかい要くんがでっかい日テレのＩＤカードをぶらさげているのを目にして、嫌な予感がしたのだ。そうか、血が抜けると戻るのか…そう言えば、冒頭で輸血してたなあ…事故落ちが待っているのかあ…

俺も間違いなく昭和村民だが、だからこそ若者が懐メロ・カバーで終わってほしくないのだ。「オリジナルじゃないとダメだ」さすが要先生わかっていらっしゃる。ああ、でもあなた、小林先生なんですよね…口に合わねえんだ、俺が若者だったころから。。という無粋な我儘は堪えるにしても、事故の処理がいたたまれない。血ぃ垂らしてやってきたのはいいけど、速攻病院運ばれて、おかんというか娘も行っちゃうのに、あなただけ残って歌うの？　いくらなんでも孫が死にかけてたら救急車乗るだろ、輸血できんのあんたしかいないんだから…！　wacci と共演ぐらいまた出来るって！　うちの近所の公園フェス（無料）にも来てたって！

バンマスのギタリストがかけてヘルプで成立しちゃうってこれ、めっちゃ悲しい、バンドをナメた非常に残念な描写に見えるのだ。ましてその後、ボーカル戻してデビューしましたとか…テレビ局映画とかえらそうに蔑んだようなことはわたくしとて言いたくないのだが、重たい世情から始めながら、でもそれがポーズにしか見えない、そこに帰ってこずに嘘くさいキラキラで逃げ切るってこれ、まさに私のなかでテレビ局映画への偏見を形作る定義に符合してしまうのです。いや、よいとまけなアレはやっていたし、コミュニケーションは取り戻したかもしれないんですが、もうちょい気の利いた事故への伏線か、切実な演出はなかったの？　平成末期のバンド・ボーイ、事故を隠し、演奏しきってステージで吐血、燃え尽きた、真っ白だ…とか見せてほしかったわ（だからそれが昭和の発想）。

つらつら言いたくなるのはクライマックスに至るまでが本当に楽しかったからで、実に惜しい一本だと思いました。でもリメイクなんですね、これ…