[コメント] 容疑者(2002/米)
あと、何本…この二十世紀を代表する名優の主演作に立ち合うことが出来るだろう?デ・ニーロの近作はほとんど全て劇場で見ている。後々、きっと後悔すると思うから、この様な地味だが堅実な佳作を見逃してしまっていたとしたら。
アメリカの家族が思い描いた幸福な未来予想図たる『海辺の街』は、今や絶望と倦怠と堕落だけが残された夢の跡。ゴッドファーザーの父権が廃れ、親が子を、子が親を忌避する時代、現在への慟哭ならぬ諦めと沈黙が、かつてのゴッドファーザーにより体現される皮肉。そんな隔世の感が家族の再生を懇願する父親の叫びに昇華された瞬間、ドメスティックな背景への隔絶感も、いささか強引な諸設定への不満も、全て解消された。そう、道を誤った祖父、正しく生きようとした父、しかし道を過とうとしている息子、そして孫、これらは年代記たるための系譜なのだ。そして、そこには、『フォレスト・ガンプ』が持ち得なかった、血の通った嘆きと希求が確かに見受けられた。何故、このような誠実な類のアメリカ映画が、話題作の陰に埋もれなければならないのか。
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