オレはこのイーニドという女の子にまったく共感出来ないのですが、それ以前にこの映画が観客を彼女に共感させたいのか、させたくないのかがよく判らなかった。この世はクソだと思いつつ、でもいちばんクソなのは自分だということも彼女は知っている筈で、しかしこの映画はそこをほとんど描いてない。なるほどブシェーミの演じた役は重要で、彼に惹かれるイーニドも悪くない。でもイーニドは、たいした苦労もなく彼と寝るでしょう。はいこれ間違い。お前がブシェーミを選べる立場にあるんじゃないんだよ。お前ブシェーミをナメてんだろ。心のどこかで、やっぱり彼をバカにしてるんだろ？　そこでつまづかないようなやつの悩んでいるフリまで、オレは面倒見る気はないんだ。

バスに乗ってどこかへ行くのはかまわないけど、負けて逃げていくんだということは自分で判っているのだろうな。だってヌンチャク男を見ろよ。彼は今まさに、自分のいる場所から一歩も動かずに世界に勝利しているではないか？　この映画に真実があるとすれば、それを背負っているのはヌンチャク男であって、間違ってもイーニドじゃないよ。