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[コメント] 夜明けまでバス停で(2022/日)

「貧者の兵器」としての映画の力に感動する。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハナクソみたいな予算でも、映画で社会をひっくり返そうとしているのは素晴らしい。こんな国おかしいだろと怒ること、抗うことは尊い。

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』という映画には、地球連邦軍大佐の「マフティー(テロ組織)にブッ殺されても文句は言えんな」という独白がある。オレはこれ、作り手の意図を超えて時代を捉えた象徴的な台詞だと思っている。虐げられた者の怒りは、宙に消えるわけじゃない。どこかで爆発する。わしらそのせいで死ぬかもしれんが仕方がない。関係ないフリしてても、我々も加害者なのだから。或いは、加害者の支配を我々が許してきたのだから。文句は言えん。

とはいえブッ殺されるのはイヤだなあー、というのが人情ではあるのだが、さしあたっては社会的弱者に対してやさしくするくらいしかできることがない。少なくとも踏みつけにしない。バカにしない。オレだってちょっと運が悪けりゃホームレスだ。できれば援助したい。まー実のところそれさえも簡単じゃない。どこからかオレに毎日100億円振り込まれてるんだったら、日本中の弱者にメシを食わせる。でもそんな金ないもんなあ。国家には、それができる。少しやってるが、全然足りてない。

夜明けまでバス停で』は弱者の怒りをストレートに銀幕にぶつけており、コ、コレだよ今どきの映画に足りなかったものは、と嬉しくなった。まあ中には雑な怒りもあるし、やっぱり怒り=爆弾なのかそれしかないんかと思いつつも、作り手はそれしかねえんだ爆弾なのだと言いきっており、まあ立派な態度だなと思いました。

(評価:★4)

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