その後の偽映画の展開は意外やうまく帳尻が合って破綻もなく、且つ佐藤浩市の余裕の演技っぷりでぐいぐい画面を引っ張っていく。あちこち散らばめられた映画への愛情が宝探しのように楽しいし、2時間を越える長さにもかかわらずだれるところがなかったのは褒められていい。

ラストの波止場での活劇シーンは真殺し屋が登場で一応盛り上がり、そして映画を支える裏方の見事なフィナーレもフェリー二的で、私も一映画ファン、ここで泣きそうになりました。ホント、三谷って、映画好きなんだね、といいたいところだが、そこがちょっと鵜呑みに出来ないところがあるんです。

何といっても、この映画、まだまだ演劇的でございます。映画へのオマージュがあちこち溢れておりますが、三谷の映画少年としての望郷的な心までは画面からは感じなかったです。アイデア、というか、何か言い方が悪いけれど、ツールとしてやっちゃってる感じがなくもない。（映画へのオマージュだとしたら、ぐっと観客に伝わる心情的なものがもっとあるはずです。）

とはいいながら、例の、佐藤浩市が信望する大スターを柳澤愼一が演じているのには驚きました。かなり細くなってしまって、見た目では全く分かりません。彼は大スターじゃなかったけれど、コメディ俳優では結構過剰なほどの出演をしていました。（池内淳子の夫でもあった方ですね）この辺りの俳優の使い方は愛情が細やかで感心しました。

日本ではあまり当たらない映画でのコメディは危険な賭けなんですが、それに常に挑戦しているのは映画ファンとして爽快でこれからも応援したいです。

演技的には常にトップランナーだった佐藤浩市然り、妻夫木聡もかなり俳優として作っているし立派だ。西田敏行にボスとしての凄みが欲しいと思ったけれど、これは三谷の要求なのかも知れない。後は小日向文世 、寺島進、 戸田恵子が相変わらずうまいし、ドラマを重厚にしている。ちょっと戸田恵子は厚化粧をして楽しみ過ぎかなあといった気もしないではないが、、。

おう、忘れていました。深津絵里、綾瀬はるかはいいけれども、まだまだ硬いかなあ。絵里さんは思いがけず妖艶不足でしょうか、、。でも何だかんだ言っても映画は楽しまなきゃ。みんな、観客一同、一斉に同じ気持ちを持ちわくわくさせてくれたのは凄いことだと思います。また、映画を作ってください、三谷様!