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[コメント] フランケンシュタイン対地底怪獣(1965/日)

実は怪獣映画としてはとても画期的な功績を残した作品でもあります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 最初にこのコメントに投票してくださった方に謝罪申し上げます。どうしても書いておきたかった事があるので、敢えて直させていただきます。

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 この映画は当初アメリカのベネディクト・プロとの提携作品として作られた(と言っても、製作の全ては東宝が行い、ベネディクト・プロは金だけ出して、更に後で難癖をつけまくったと言う曰く付きの作品(ラストが二つ存在するのはそれが理由)。

 それでアメリカとの提携だ!と言うことで、その代表として選んだのがフランケンシュタインだった(キングコングは既に出してる)。そこまではすんなり進んだのだが、日本側でどんな怪獣を出すか、制作側はかなり悩んだらしい。

 最初白羽の矢が立てられたのは『ガス人間第1号』の主人公・水野。あのラストで実は水野は生きていて、フランケンシュタイン博士の末裔に藤千代の再生を願い、それで出来てしまったのがモンスターだった。と言うもの。これから分かる通り、ここではフランケンシュタインの怪物は巨大化するわけでなく、むしろ『フランケンシュタインの花嫁』のようなストーリー展開を考えていたらしいが…個人的意見を敢えて言わせてもらうと、作られなくて良かったと思う。(それに、金子ゴジラがどうなっていたか…)

 その企画がボツり(当然!)、それで日本側の代表に選ばれたのが『ゴジラ』。この場合のフランケンシュタインの怪物は本当のモンスターとして巨大化し、それにゴジラをかち合わせようとした(これまた『キングコング対ゴジラ』そのまんまになったらしいけど)。だが、ベネディクト・プロから「新怪獣を」という要請があって、結果として新しい怪獣バラゴンが作り出されたと言う経緯がある。

 さて、ストーリーだが、冒頭、マッド・サイエンティストが登場。やっぱフランケンシュタインと言えば、当然マッド・サイエンティストだろう。これが結構無茶苦茶な性格をしているのが実に良い。

 そして、流石円谷!特撮技術は最高。この年代にここまでの特撮技術があったことに驚かされる。撮影もよく練り込まれているし、今の何でもCGでやってしまおうと言う風潮の映画家に見せてやりたいくらい質が高い。ここに伊福部昭の音楽!これがとにかくよくマッチしている。おどろおどろしくもなく、かといって高揚感をそれ程上げるのでもなく、音楽の中に一抹の寂しさを封じたこの作りは伊福部音楽の中でも出色の出来だと思う。

 音楽に合わせるように、人間の世界に住むことが出来ず、むしろ人間に追われ、やむなく逃げ回る怪人が、残忍な怪獣に対し、人間のために戦うシーンが涙を誘う。敵役として登場した地底怪獣バラゴンの残忍さもよく表されていた。ペンションを襲ったバラゴンが、次の登場シーンで口からぼろぼろと服の切れ端を落とす辺り、イメージとしてこいつがどれ程凶暴かを良い具合に見せている。

 そして怪人対バルゴンの戦い。実はこれは非常に画期的。今までの怪獣ものは、怪獣が単体で出てくるか、あるいは怪獣同士のどつき合いでしかなかったのを、人間のために、曲がりなりにも巨大化した人間が怪獣と戦うのだから!ウルトラマンの先駆的作品と言っても良いのではないかな?(むしろ設定はシルバー仮面に近いか?(笑))

 ちなみにこの作品、日本公開版とインターナショナル版の二種類がある。インターナショナル版は残酷描写を避け、ラストも変化しているのだが、このラストはどうしても首を捻る。バラゴンをやっとの思いで倒したフランケンシュタインの怪物の前に突如、なんの脈絡もなく巨大タコが現れ、湖に引きずり込んでお終い…

 次回作の『サンダ対ガイラ』の伏線なのだろうが、ちょっとこれはないんじゃない?

 と言うことで、心情的には5点。ラストで-1。

(評価:★4)

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