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[コメント] 宇宙大戦争(1959/日)

改めて。SF映画における言葉の重要性というものを見せ付けてくれました。感動もんです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『地球防衛軍』の正統な続編で、キャストこそ違えど、同名キャラクターが登場する。かつてのミステリアンによる地球の危機を経験に結成された国際宇宙科学センターが今度は大活躍すると言う設定になっている。

 東宝による初めての宇宙を舞台とした作品なのだが、これが又実に好感の持てる作品に仕上がっている。初めての宇宙描写と言うことでかなりの気合いが感じられる。当時の特撮の常でどうしてもチャチさは出てくるのだが、科学的考察は以外にもしっかりしているので、巧く言葉でフォローすることを忘れてない。例えば宇宙に出たスピップ号が平行飛行する際、ロケット噴射は止められる。これを「慣性飛行に移る」と一言で説明しきっていたり(地上で作られると、炎はどうしても上に向かってしまうため、あそこでもし火を噴いていたら、とても不自然に映ってしまう。それを避けるためだろうと思うが、ちゃんとその説明があるのが嬉しい)。月面上で地球と同じような重力があるのは、「重力調整装置を働かせろ」と言う説明が付けられる。良いねえ。特撮技術水準を超えて、描写不可能ならば、そうやって言葉で説明してくれるととても嬉しい。しかもこれが実にさりげなく語られるのがポイント高し。

 本作品は“宇宙人対地球人”と言う壮大なテーマなため、人間ドラマの方が脇に押しやられがちなのだが、その中で岩村役の土屋嘉男の役割は非常に格好良い。ナタール人によってロボット化され、彼らの命令に従ってスピップ号の一台を破壊してしまった彼は、自ら責任を取って残った仲間を逃がすため、一人月に残り、ナタール人との戦いで命を落とす。こういう特攻的な演出、私はとても好きだ。

 それにその後のナタール人対人類の壮大な宇宙での戦い。これ程伊福部マーチが見事に合っていた演出はなかなか無い。もう格好良すぎ。なんでもあの円盤を飛ばすためには東宝のお家芸である吊りだけでなく、ゴムで飛ばしたり、手で投げたり(笑)したそうだが、その甲斐あって、スピード感溢れる演出がなされていた。

 ナタール人の演出が前作『地球防衛軍』のミステリアンほど魅力的でなかった事(出てくるのもほんの僅かで、あっという間に全員殺されてしまう)、それに彼らが意外に弱かった事はちょっといただけなかったけど、ラストの、地球に侵入したナタール人を撃退した時の、被害を出してしまって残念そうな長官の顔に免じてOKを入れよう。あの表情をラストで出させるとは。よく分かってらっしゃる。

 一言。ナタール人は弱い上に馬鹿だ。月基地が破壊された後、アメリカ、ソ連、日本が突出した軍備を持った時を狙って襲ってくるなんて。あと十年位放っておけば地球人は勝手に自分たちで殺し合ってただろうに。それ以前に、人間をロボット化できるんだったらアメリカの大統領とソ連の書記長をロボットにすればそれで全ては終わっていただろうに。

(評価:★5)

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