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[コメント] 復活の日(1980/日)

邦画では貴重な本格的スペクタクルを目指した作品。部分的にそれは成功させている。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 かつて私は小松左京のSF小説に夢中になった時期がある。それまで読んでいたジュブナイルとは違って、実に骨太で、それで読み応えがあった。後に海外のSF小説を読むようになったが、今でも彼の小説は私の中では輝きを失っていない。

 実際、彼の作品に触れることによって、高校時代は小説家になりたいと言う思いを強くし、随分経ってから、彼のような文章は到底描けないと言う当たり前の事実に気付かせてくれたのも、やはり彼の小説のお陰だった。

 小松左京の作品は、ビジュアル的に実に見栄えがするので、次々と小説が映像化されている。『エスパイ』、『日本沈没』、『さよならジュピター』、『首都消失』…彼の作品がは日本人が描いたとは思えないグローバライズされたものが多く、その壮大な物語を映像化するには技術も金も拙い作品ばかり。ハリウッドで作ってくれないか。と一時期本気で思っていたものだ。

 それでこの『復活の日』だが、角川映画が当時の邦画最高の24億もの巨費をかけたと言うことで有名になった作品である。この手の作品には引っぱり出される深作欣二。さすがに金の力は凄く、かなり見栄えがする。主役の吉住周三役の草刈正雄も格好良かった。

 だけど、それでも足りなかった。と言う感じ。物語のバランスがあまり良くなく、小説の中でも小さな扱いだった部分をクローズアップしたり(あのレイプシーンは「無駄」とは言わないけど、あんなにしつこく出す必要性がない。だけど当時の邦画ってそういう素材が好きなんだよな)、肝要な部分をさらりと流したり、勿体ない作りだった。原作では“冷戦構造を超えて”が一つのテーマだったのに、そこが全然描けてなかった(それとも無理だったのか?)。何より最後の原爆の連鎖爆発が全然説得力無し。原作にあったコバルト爆弾の説明も全く抜きにされているので、何故吉住が最後に生きていられるのか、その説得力がまるで無し。良い余韻が残った小説の終わりとも少々異なってたし。

 日本でスペクタクルをめざし、部分的にそれを成功させたと言う功績は買うべきだろう。

(評価:★3)

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