[コメント] HACHI 約束の犬(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この“忠犬ハチ公”だが、こんな何ということもない物語が日本において大々的に喧伝されたのは、当時の日本の国内状況があったと言われる。ハチ公が死んだのは1935年。日本が満州事変を経て中国といがみ合っていた時期で、更に国際連盟離脱によって、国際的に孤立していた時期だった。こんな時に国民を一つにするために用いられたのが忠君教育というもの。主人に対し、ひたすら忠実になることで、国民を一つにしようとしたのである。その際、忠犬ハチ公の物語は格好な材料となった。犬でさえ、これだけ忠実なのだから、ましてや人間では。と言った具合に用いられたお陰(実際は逆だろうけど)。そのお陰で何度も映像化もされ、ハチが死んだ渋谷駅では銅像まで出来た。
つまり、どんなつまらない物語でも、作り手と世論を使えば大きな感動物語に出来る良い教材となることを如実に表した、ある意味この物語も時代の物語だった訳だ。
では、その時代性を全て取っ払ってしまったら?
ハルストレムがこの作品を映画化するに当たり、取った方法は、本来のほんの小さな美談に物語を収めてしまうことだった。新しい家族となった犬と、それを取り巻く家族の面々の小さな幸せや、出来事の中で犬との交流を通して描き、好きなようにやって、命を全うした犬の小さな小さな話にまとめてしまった。
でも、おそらくこれが日本で作られたどんな“忠犬ハチ公”物語よりも実像に近いんじゃないだろうか?下手に社会の空気を取り入れず、一つの家族の一エピソードくらいがこの作品には丁度良い。なんか安心したよ。
それに何だかんだ言ってもハルストレム。演出はとても良く、たとえストーリーが分かっていても、やっぱりぐっと来るシーンは多い。ラストでは不覚にも涙が…こんなベタベタな展開で泣くはずはない。と思ってた自分にも不意打ちな感じだった。
何だかんだ言って、家族を作る物語に弱い私には本作はストライクだったんだな。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。