この監督、村上春樹が云々とか話してたけど、TKやバイクのシーンを観るにつけ、結局はAKIRAが好きなんだなあ…と思って興ざめ。エンディングで最後に映るのがレインメーカーの今にも目覚めそうな横顔だったり、エンドクレジットがSEで終わったりする作りはどちらかというとホラー映画に近い後味すら抱かせる。最初の方に出てきたジョーの友人がボスに引き渡され、切り刻まれたことで、逃亡していたルーパーの体も同期するようにして傷ついていったところとか、しくじったキッド・ブルーが指を潰されるシーンとかの安っぽい脚本も気になったけれど（というか、ターゲットがデータベース検索で簡単に絞られてしまうのだから、60秒マックのように楽チンだ）、やはり一番の失敗は自分の未来の分身たるルーパーの方が終始主導権を握っていて、主人公は冒頭のシーンから最後まで消極的にルーパーの到着を「待つ」ことが基本的スタンスとなっている点。そこから導かれる結末はやはり消極的な解決法＝自死ということになってしまう。レインメーカーの誕生を防いだ、忌まわしい未来を自分の手で変えたというダイナミックなエンディングに、最も弱い形で繋げてしまったような印象を受けた。もちろん、こういう弱起的な手法もありだとは思うが、アクションの比重が高い本作に適したアプローチだったかどうか？ 違和感が残る。