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[コメント] 浮雲(1955/日)

好き、とかもちろん、愛してる、とか言わない。男の笑顔はない。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この事態で黒澤ばかり見ていたので、流石に暑苦しくそれでは高評価のナルセでも見てみるか、と思ってクリック。amazon primeは古典に関してはnetflixよりずっといい。映画を見たら、まずこのサイトで名匠巨匠天才秀才名だたる名コメンテータ方々のコメントを全部読む。20年も付き合っていれば誰がどんな感じのことを言うか大抵想像できる。予想外の評価があったりしてそれも面白い。いや大変勉強になる。この映画も見た直後は、なんだ森は太宰じゃん、秀子のたまご顔、程度のコメントしか思い浮かばなかったし★3つだった。それが評価あがっちゃうんだからコメンテータの力は恐ろしい。以前ジャンジャンで淀川長治とおすぎのシネマトークを生で見たことがある。二人の話の方が当の映画よりずっと面白かったのと同じだ。

戦後風俗の中での男と女って話だけど、最後で男が女の亡骸に泣きつく、それはないだろ、と思った。あの宿舎のまかないのおばさんの娘とか口説いていなくっちゃ。そこが話での不満。名台詞満載だがいずれも日常会話で使う言葉でこれは原作がうまいんだ、きっと。コメンテータの方がそう書いている。wikより信頼できる。20年前wikは今ほど栄えていない。もっとも私は話にあまり興味がない、というか映画でのストーリーや登場人物の絡みに興味がない、というよりわからない。

そこでどう見せるか、という画面の作りに関心がある。あっと驚くトリッキーでいて自然なシーンが好き。びっくりするけど、そうだよなー、と思える画面。植物園の温室みたいな仏印の官舎、最後の屋久島の宿舎(入り口付近を横から取った)セット感、なんかは頑張ったなーと思うだけでカンドーできなかった。伊香保温泉はよくあの坂道感を出したなー、と思った。照明と背景を完全にコントロールできないロケはしないんだな、とも。アパートの長屋は道路の方が明るい逆光で手前が暗く人物がシルエットになる。集合の流しで隣人の女が米を研ぐシーン。トイレは共同でもちろん廊下の北側の隅にあるはずだ。この作りも完璧だった。

役者は森雅之。この映画での笑顔が思い浮かばない。そんな男と腐れ縁の高峰秀子。ゆで卵見たいな顔の肌でとても肺病病みのやさぐれに見えない。それがよかったかも。吉田喜重の妻になる岡田茉莉子が若くてすごい。すぐに手を出す森雅之。それを誘うような岡田。この辺その道のもの同士のあ・うんの呼吸。日常会話でこの手の関係を自然に表しているところは当たり前すぎて気にもとめなかった。あんまり人前でこう言う話をするもんじゃないという私の倫理観は庶民のものだね。三鷹市が太宰を客寄せに使っているのがいまだに理解できない三鷹在住40年のじじいの繰り言でした。

(評価:★4)

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