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[コメント] 神は見返りを求める(2022/日)

何ごとも断らない男(ムロツヨシ)の自意識は他者に開かれているようで世界には閉じられている。表現の意味をはき違えている女(岸井ゆきの)の向上心は世間の暇消費に媚びているだけだ。主体性なき者の空回り。きっと吉田恵輔はこんな人たちが嫌いなのだ。
ぽんしゅう

吉田恵輔の前々回作『BLUE ブルー』の主人・瓜田(松山ケンイチ)もまた無償で人に尽くす男だった。瓜田の無償はボクシングという閉じられた世界でストイックに遂行される。田母神(ムロツヨシ)の主体性なき無償はには規律が存在せず、だらだらと垂れ流され続ける。瓜田が尽くす相手の向上心は勝利という明確な目的に向かった修練に費やされる。田母神が尽くすユーチューバーゆり(岸井ゆきの)の主体性なき向上心は、活動することが目的化してしまった円環のなかで浪費されているだけだ。

田母神とゆりは、互いに互いの“愚かさ”に気づき始めたように見えた。だが二人は関係を修復できないだろう。何故なら、吉田恵輔は主体性と規律なき人間が、きっと嫌いだから。吉田にとって『BLUE ブルー』の主人・瓜田(松山ケンイチ)の「無償」こそが敬意に値する価値ある行為なのだ。吉田は硬派なのだ。その辛辣な視線は容赦なく“軟弱な世間”を突き放す。吉田のオリジナル作は面白い。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)クワドラAS[*] けにろん[*]

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