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[コメント] アイデン&ティティ(2003/日)

シンガーソングライターは二度生まれる。
町田

良く悩むソングライターの徒弟時代。「本当に言いたいコト」を「自分好みの言い回し」で「本当に出したい音」に載せて表現するってのは相当に難しい。それをバンドスタイルで遣ろうってんだから更に選択肢は狭まる。当然、ある程度の妥協は必要になって来るし、責任は重大だ。

この物語は或るソングライターが紆余曲折を経てその「交差点」に達するまでを描いたもので、それはその後も続くであろう彼の音楽人生の単なる始まりにしか過ぎない。最近、高田渡のドキュメンタリ『タカダワタル的』を見て痛く感激したのだが、ああいう生き方もあるのだから、まぁ今度は焦らないで楽しんで遣って行って欲しい。

遣って行って欲しいのだが・・・。劇中で奏でられる曲、紡がれる詩には、あくまで私見ですが、殆ど全くと云っていいほどセンスを感じられなかった。ので、観念論はもういいからもちっと音楽聴けよ、練習しろよ、と思わずにいられなかったのも事実。

映画の方も劇中曲と同じくらい拙い。ディランの登場するシーンはもう少しあるんじゃないかな。「分身」シーンもワンカットだけで次のシーンでは普通の通行人いるし・・・。中途半端だ・・・。そしてなんであのディランはギターを弾かんのだ?峯田が弾き語ってる時にハーモニカを絡ませんのだ?みうらじゅんの付け鼻さえも見事じゃないぞ。

ときにあのハーモニカはエンケンさんが吹いているのだろうか。ハッキリ云って一辺倒だ。ニール・ヤングが担当した『デッドマン』の音楽を意識したのかも知れないけど。若い人が見たら「ハモニカってダサイネ」と思われそうで嫌だ。

台詞の硬さが気になる。全部見たわけじゃないけどクドカンとしては今までで最低の仕事なんじゃないかな。漫画ってのは音声がない、つまりキャラクタを演出するのに声とかイントネーションを用いられないから、その回避手段としてあの世にも独特な語尾、コロ助の「ナリ」とか、「デスワ」とか、「ゾナモシ」ってのが生み出され、「ミー」とか「ワガハイ」とかが許されているわけで、それはあくまで漫画だからであって、これは実写化されてる以上、それを残す必要ないんじゃないかって思う。

具体的には麻生久美子の演じたヒロインのことだが、彼女の頭の良さとか、クールさを表現するのに、なんで実写映画が「台詞の言い回し」なんかに頼らなければいけないのだ?あれじゃアキバ系電波少女にしか見えないよ。

(評価:★3)

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