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[コメント] バンテージ・ポイント(2008/米)

一つの事件を巡る、複数の「目撃者」の視点。勿論これは「JFK暗殺の謎」を下敷きにしている。ところが映画はこのミステリーの面白さから、何故か次第に脱線して行くのである。☆3.7点。
死ぬまでシネマ

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8人ではないわな。番組プロデューサーのレックス(ウィーバー)・SSのバーンズ(クエイド)・スペイン市警のエンリケ(エドゥアルド=ノリエガ)・観光客のハワード(ウィティカー)、そして強いて云えば大統領のアシュトン(ハート)の計5人だろう?目撃者は。後は事件そのものの関係者(実行者)じゃねえか。この5人の内、映画の観客と同じただの見物人の立場の人物は、ハワードのみである。だからハワードは絶対に欠かせない人物であるが、彼一人という所が残念だ(シーチキン氏や林田乃丞さんの云う通り、ハワードの仕立てようはもっと別にあったと思う)。

無関係の一般人が、それぞれ「違うもの」を見た。それらはどのように結びつくのか本人たちは知らない。それぞれは「真実」でありながら「誤解」と「錯覚」であり、全てを分析した我々観客だけが本当の物語を理解する…こういう話でなければいかんだろう。或る視点の物語の中で聞こえてくる「叫び声(その時点では誰が言ったのか不明)」やちょっとした映像、見た本人は気づいてないが映画の観客には「ああアレが…」と思わせる演出…、この映画でも幾つか見られはしたが、謎の核心には余り有効に結びついていなかった(NAOさんの云う解決の決定打になっていない)。それも残念だ。

8人の内3人は事件を起こしたテロリストそのもので(よって彼らには事件に対する謎「!??」は無い)、残り5人の内4人までもが一般人と違う視点では、謎の盛上げが悪くなるのは致し方ないだろう(この辺、制作側が「高い視点」に立ちたいという(アメリカ人的な)自分の欲に負けていると思う。本物のミステリー作家なら、一般人の目から離れる事は無いのだ)。

話が急展開したかと思ったらギューンと引戻されるのは、まるで銀角の「紫金紅葫蘆」(西遊記)に吸込まれるような感覚で面白い(SFの手法だ)。繰返しの効果も巧く出ていたが、余りやり過ぎて後半はゲンナリしたのは事実である。3回が限度だろう。

あとシガニー=ウィーバーが最初の視点でしか出てこないのも残念。こういうメタ物語ものでは最後に原点回帰して彼女に締めてもらいたかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)カルヤ[*] おーい粗茶[*] kazya-f[*] 林田乃丞[*] けにろん[*] 甘崎庵[*]

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