[コメント] 花とアリス(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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かねてより私は岩井俊二監督に対し、小さな疑念と大きなシンパシーを感じていた。
奥菜恵に白ワンピを着せ夜のプールに飛び込ませた『打ち上げ花火』しかり。中山美穂云々よりも、酒井美紀&柏原崇による図書館でのプルーストをネタにしたリリカルな交流の方に数倍の体重をのっけた『Love letter』しかり。上京したての大学生松たか子を桜吹雪の中、自転車で走らせた『四月物語』しかり。青々とした田園の広がる地方都市に「憂いある少女」の生存の活路を見出した『リリィ・シュシュのすべて』しかり・・・
世間一般で語られる彼の映画のなんとなくオシャレなイメージとは裏腹に、その演出はまさに童貞の夢想である。そうした疑念は、気難しそうな美青年だった彼のルックスが、かねてからの黒々とした長い髪、色白な肌に加え、ドンドンふくよかに変化していることも相まって、今では確信に近い。私は岩井映画を最もエロゲーに接近した表のカルチャーとして注目している。
そして私は彼のそんな嗜好に全面的に賛同していた。
さて今回のネタは鈴木杏・蒼井優。 食ったら死ぬとも思える、今最高のネタである。まだ若い二人は将来が期待される女優だ。しかし彼は知っているのだ。「少女」の寿命が短く、その価値は時価であることを。構想を温めておくなんてことは出来ない。「今そこにある美」は、すぐにでもフィルムに焼き付けねば明日には失われてしまうことを。
この映画は冗長とも思えるし、郭智博もいまいち弱く魅力が伝わりにくい。 が、そんなこたーどうでもいい。花とアリスの二人が発するみずみずしい輝きがそれを補って余りある。そしてその輝きを岩井俊二は当然余すことなく逃さない。
小ネタに笑い。花の一生懸命さを応援し、アリスの健気さに涙する。持ち前の美しい映像美はどっぷりと「彼のエルドラド」へと見ているものを引き込んでくれる。
クライマックスのバレエシーン。フォトグラファー大沢たかおの「パンツ見える」という「紳士的」な気遣いに対し、アリスは「減るもんじゃなし」と何食わぬ顔で答える。「男子的」にはセオリー通り、期待通りの大正解。
イエス!これぞ岩井の真骨頂。
近年、歌謡曲でも漫画でも男の子からどんどん遠くなる、折り目正しき「少女」という存在をグイとこっち側に引き寄せてくれる岩井監督はやっぱり最高なのである。
あ、後ろにいたデイブって室伏かと思いませんでした?
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