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[コメント] ミツバチのささやき(1972/スペイン)

少女の不思議な世界観(生死観)を描いた秀作。
hk

 麗しき、そしてどこかおぞましき女の子の物語。とりあえずは子役のアナ・トレントの演技(というか視線)が素晴らしいとでも言っておこう。単に「可愛い」では済まされない、あの吸い込まれそうな瞳は何を見つめているのだろう。

 ミツバチ...ミツバチたちは一心不乱に働きつづける。死ぬまで。休むことなく働く。ミツバチたちは「死」を意識しないのと同様に「生」をも意識しない。この映画の主人公は、ちょうど生と死を意識し始める年頃の女の子たち(男の子たちはおそらく問題ではない)である。この「意識し始める」という微妙な状態に注意する必要がある。死を意識しないのであれば、死と出会っても条件反射的な(つまりは動物的な)反応で事は済むのであるが、死を意識し出すという過渡期的な状態のもとでの死との出会いは、心理的にある種の「剰余」を生じさせる。もう少し年をとればその剰余を直ちに消化できるのであろうが、この映画に登場する少女たちにとって「死」は十分に対象化・相対化がされないまま空間全体に「精霊」となって漂うこととなる。

 その「精霊」は少女たちにとって、「目を閉じて、耳を澄ませば会話ができる」存在となり......この映画を観る者の心には、この少女たちと精霊との会話がいつしか「ミツバチのささやき声」のように思われてくる......

(評価:★4)

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