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[コメント] ロッキー・ザ・ファイナル(2006/米)

オリーブオイルをさっそく塗ってみたくもなった。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







水槽を泳ぐ年期のいった亀たちを見た瞬間、これまでのエイドリアンとの思い出がよみがえってきた。続いてのエサ撒き(だよね? 鳥に対しての)で「ああ、そうだった。この男はこういう男だった」ということを思い出し、続く墓参シーンでの「慣れた動作でパイプ椅子を木にしまいこむ様子」を見て、彼の日常や彼女への変わらぬ想いを理解した。

これらのシーンはどれも実にさりげないし特に台詞で補足されているわけでもないのだが、だからこそ胸に迫った。いま思い返しても、完璧な映画演出だった、と思う。初めてこのシリーズを見た人にも、この主人公の孤独や優しさや亡き妻への深い愛情がいやおうなく伝わるだろう。伝わらないはずがない。

その後のちょっとした演出や展開にも、まったくもって無駄がなかった。無駄はないのにいちいち胸に迫ってきた、ちゃんと届いた。

中だるみ? 何それ? 無用な人物? エピソード? 何それ? そんなものは(少なくとも私には)一切なかった。ロッキー・バルボアがロッキー・バルボアで在り続けるために、彼の日々の暮らしやキャラクターや周囲の様子や心の動きや物語の流れや核となる<彼が伝えたいこと>を表現するために不必要なものなど何もなかった。ちっともまるでまったく全然どこにもひとつもつゆほどもちりほども飯粒ほどもなかった。ビタ一文なかった。

スタローンはほんとスゲェ。てゆーか、さらに進化しててカッコイイ。映画のあるべき姿、というものを身をもって知り尽くしているとしか思えない。

やたら冗長だったり小難しかったり説明不足だったり自己満足に終止してたり何も伝わってくるものがなかったりする映画しか撮れない監督は、これを見て「よい映画とはどういうものなのか」を学びなおすとよいと思った。そのうえで周囲のどうでもよい声にびくついたり迎合したりすることなく、胸を張って自分の意思を表現してゆけばよい、と思った。思う。私もそうしたいと思う。まー、私は監督じゃないけどな。

でも、いつまでも受け身でなんていられるか、前進せずにいられるか、と思った。思う。今は、今だからこそ、今ゆえにとても強く思う。心から思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)uyo たかやまひろふみ[*] ペンクロフ[*] ナム太郎[*] ごう

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