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[コメント] タイムマシン(2002/米)

裏目に出ている要素がないとは言わない。しかし、個人的には'60年に製作した同原作映画化作品よりは納得するところも多かったぞ。(レビューはかなりネタバレ→)
BRAVO30000W!

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を観て非常に明確だったのが「過去は変えられず、未来は変えることができる」ということ。実際SF的な論理を持ち出すとこの時点で既に破綻していて、SFロジック推奨派の突き上げを食らうことになる。現にパンフレットの中では某タイムトラベル論を書いた人が、婉曲に「この映画のSF設定はちょっとおかしいですよう」と書いている(ように読める)。

タイムパラドックスを上手く扱った『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『タイムアクセル』『恋はデジャブ』などの作品(他にもパンフレットに色々書いてあるけど)が、SF設定に詳しくない人達をも俄SF設定見識者にしてしまっているものだから、過去に戻るのを二回で諦める主人公に苛立ったりするのだと思う。

これは考え方次第では「もう一度エマが死ぬかもしれない、死ぬ場面を見てしまうかもしれない。そんなことは耐えられない。ならば未来へ行って良い知恵がないか探す方が賢明ではないか」と本作の製作者は考えたのだと思う。で、これは別に監督の責任の範疇だけど、書いたのは脚本家だからあまり曾孫をいじめてもどうかとは思うのだな。4年もの歳月をかけて(4年で創れるっていうのも凄いけど)愛する者に対しての想いのみで創って、さてこれで彼女を救えると思って過去に遡り、やっぱり死んでしまったら。それも暴漢ではなく遠く離れた場所で自動車事故で死んだのであれば、また繰り返して試そうという気になるかな。なる人もいるんだろうな。でも三回確認する勇気もないな。私は。

そもそもエマが亡くなったのがタイムマシンを創るきっかけみたいなところが今となっては痛い設定なのだが、個人的にはオッケー。人間、最愛の者を失うとどんな行動に出るかわからんし。まぁ、そこらへんの状況描写が少ないので釈然としない向きも多いだろうが。ちなみに1960年製作版は「今の時代はいやだ」「未来はどうなっているか見てみたい」という、厭世的な科学者の自己満足による動機でタイムマシンが創られる。ツッコミ量としては同次元のものがあるかと。

また、80万年後の未来では言葉が失われているものの教育は続けられていて子供は今の英語が喋れる、というのは苦肉の策だと思う。堂々と英語を喋っている前作を潔しとするか、ちょっとだけでもリアリティを考えてしまった本作を礼賛するかは個々人の趣味嗜好のレベルによると思う。で、個人的にはオッケー。

で、80万年後にはエマのことを忘れているというのは、確かに切り替えの速い人間だとは思うが、ある意味80万年含めて自分の過去をすべて破壊するというカンジでマシンを壊すのは前作よりも好きな終わり方だ。もう戻れない。もう戻らない。過去をノスタルジックに振り返るのはよそう。過去の過ちを充分に反省した上で、より良い未来を創ろう、という建設的なメッセージが読み取れるのだが、甘い見方だろうか。

前作へのオマージュが予想以上にあって、なおかつ前作よりもリアルな描写(マネキンはいつまで経っても同じものではないし、太陽は時間を速く進めるほど帯状になって移動していくし、などなど)が個人的には○。前作よりも80万年後に行ってしまった理由が納得できる(前作は故意に、本作は事故で)。

まぁ、前作は前作の良さがあるわけで、その作品を頭ごなしに否定するつもりもない。個人的には前作とは違った形で評価できる作品だとは思う。

イーロイ人とモーロック人に関しては恐らく前作の方が原作に近い表現をしているように思う。だが、前作の食う側食われる側の表現が昆虫的(食われる側は無抵抗)なのに対し、本作は哺乳類同志の食うか食われるかに近いものを感じる。つまりは食べる動物はほとんどいないのだろうな。イーロイは植物とか果物食べて平和に生活しているんだろうな。で、モーロックは肉食なんだな。で、本能を解き放ち過ぎた人間なら無制限に食べてしまってあっという間にイーロイを食べ尽くしてしまうんだろうな。だからモーロックの中にも統率者がいて、捕食管理を徹底しているのだろうな。というかそういう説明をジェレミー・アイアンズがしていたな、と思った瞬間、彼の存在は有効に思えた。

階級者闘争をイメージした原作や前作は、そういうのがリアルに感じられる時代だったから合っているのだと思う。今の世の中に階級者闘争のようなものがなくなったとは言わないが、今更前作ほどストレートに表現することもないとは思うぞ。

余談だが、本作品が銀幕デビューのシエナ・ギロリーは掘り出し物。正統派銀幕美女。イベット・ミミューには敵わないが、個人的には大好評。カワイイ。最高。

(評価:★4)

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