[コメント] 噂のモーガン夫妻(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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テンポの良い展開と、歯切れの良い会話で構成される。別れかけた夫婦がまたヨリを戻すという、深刻さのかけらもないお話だけど、都会人と田舎人の対話みたいな横糸までさりげなく織り込まれていて、よく出来ている。
人死んでるし、命狙われてんのにこの能天気さはなんだ、というくらいの能天気さなんだが、人生に対する前向きさと、フランクさを良しとする信仰心みたいなものが、この能天気を支えている。
現実の世の中は、前向きさとフランクさだけでは物事進まない。私自身は、<それだけでは物事進まない>という映画も見てみたいと思う方だ。が、この映画がその価値観を貫いて、それをまっとうしているのは素晴らしいことに思える。
例えば、メリル(サラ・ジェシカ・パーカー)が夫に浮気を告白したとき、夫(ヒュー・グラント)は怒りの感情を押し殺し、自分の殻に閉じ篭ろうという行動を見せる。メリルは、それだけは止めてと懇願し、夫を鼓舞する訳だが、洋の東西を問わず、世の男にはそういう傾向があるんだなとわかるし(女にだってあるだろう?)、世をやり過ごす身の処し方の一つであることは間違いない。少なくとも、感情をため込んだからといって、悪いことをしたと自分を責める必要はないと私は思う。
この映画の脚本も、ちょっと油断すると別の価値観の方へ落ち込んでしまう山脈の中から、自分たちの正しいと信ずる一本の尾根を見出し、貫くために、多大な努力が払われているはずである。表面的には能天気が装われているので、軽々とやっているように見えてしまうわけだけれど。
この、価値観を紡ぎ出すことへの妥協のなさが、この作品の一つの特徴である。そして妥協なく前向きな映画には、観る者を明るく元気にする力がある。
80/100(10/07/21記)
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