コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 噂のモーガン夫妻(2009/米)

歴然たる能力の高さを見せつけて映画を引っ張るヒュー・グラントサラ・ジェシカ・パーカーも必死に喰らいついている。必死さを感じさせないところがまた偉い。まるで好みではないが、なかなか大した女優だ。好みで云ったら断然メアリー・スティーンバージェンエリザベス・モスキム・ショウも捨て難い。
3819695

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







現代アメリカ映画におけるこのジャンルの成熟ぶりを思えば、この出来の作品をウェルメイドと讃えてしまうのは少し躊躇われる。もうひと押し、もしくはひと捻りほしいと思わせる箇所が多い。たとえば、殺し屋マイケル・ケリーがパーカー宅を襲撃するシーンはアクション的にもよく演出されていただけに、グラント夫妻を追ってレイにやって来たケリーにももっと怖さを出せたはずだ。その彼をスティーンバージェンら町民がとっちめるシーン、私なんかは単純な観客なのでこれだけでもグッと来てしまうのだが、夫妻と町民の交流に関してもうひとつ挿話なり密度の濃い演出なりあれば、ここでの感動もより増しただろう。夫妻それぞれのアシスタントを演じたジェシー・リーブマンとモスもよい働きをしており、ふたりがカップルになるという展開も面白いのだから、やはり彼らにももうワンシーンくらい出番を与えてもよかったと思う。また「フォスター」という変名や偽りの身分をめぐる気の利いたコメディ・シーンがないというのも釈然としない。総じて、実際の映画は脚本の最終稿よりもかなりシーンを削られているのではないかという印象が強い。一〇三分という上映時間には好感を持つが、私としてはもう一〇分長くなってもよいから不足シーンを補ってほしい。

と、不満な点についてばかり書き散らしてしまったけれども、改めてこれは好ましい映画だ。「熊」や「馬」といった動物の使い方。動物が出てくる映画はやっぱり楽しい。その熊が登場するシーンやライフル練習シーンなど、グラントは笑いどころを決して外さない。たかがビンゴゲームで夫妻が大はしゃぎするなんていう微笑ましさも忘れ難い。ダンスシーンは溢れ出る幸福感で圧倒してくれるほうが私の趣味に適っているけれども、そこにおいてふたりの仲違いを生じさせるというのは捻りが効いており、同時にアイドル志望少女をフィーチュアするという心憎さには嬉しくなる。映画は大方の観客が予想するとおりのハッピー・エンディングを迎えるが、それは「よりを戻す」というよりも、夜空の星を見上げるロマンティックなシーンに顕著なように「二度目の初恋」とでも云うべきある種の「子供っぽさ」の趣きが強い。グラントとパーカーの造型、そして演出の力が織り上げた素敵なラヴ・ストーリーだと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。