[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)
三人の現在と過去がリンクする、その語り節が上手い。イーストウッドの手腕もさることながら、ブライアン・ヘルゲランドの純粋な脚本が素晴らしい。全てはあの日…そう、あの日以来、彼らはどんな人生を歩んできたのか?
それが最大のテーマであろう作品。
おそらくイーストウッドとブライアン・ヘルゲランドのタッグとしては2本目の作品のハズ。『ブラッド・ワーク』では、脚本の見事さばかりが先行してしまい、イーストウッドの監督ぶりがあまり発揮されていないように思えて仕方なかった。そうした意味で、この映画では両者の巧みな腕前が十二分にスクリーンに染め渡っていた。
登場人物が皆、人間の本質を見せ付けてくれる。自分の為に、あの人の為に…気持ちは多様に存在するけれど、それをまじまじと感じ取ることが出来る。おそらく日常生活において、その本質は見抜けない。他人の内面などもってのほか。だからこそ、人々は争うことを止めない。恨むことを止めない。嘆くことを止めない。……そう、この映画は、まさしく映画の中の映画だ。鑑賞者はスクリーン中に駆け巡る人間関係の渦を心から感じ取り、同時に衝撃を受けることになる。言うならば、完全に第三者となる。彼らは、その本質を見抜けないからこそ、あのラストへと辿り着いてしまったのだ。それが人間という生き物。見抜けるのは、第三者の自分だけ。
ラストも登場人物の心の揺らぎは、決して収まることは無かった。新たな思いが芽生えていたことだろう。だが、彼らはそれに気付くことも無い。お互いを見抜けない。おそらく、1本の映画として鑑賞している自分だけ、そのことに気付く…
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