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[コメント] ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003/日)

手塚監督、本作作る前に徹底したリサーチを行ったに違いありません。ひょっとしてこのシネスケを参考にした?だって、ここに書かれてた前作の不満点、全部解消されてます。(レビューは電波入りです)
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これほど完璧なのを観られたのは、怪獣映画好き冥利に尽きるというもの。最後まで★5か★4か迷ったが…改めて考えると、真の意味での“衝撃”が会ったと言えるかどうか。迷いながら★4。

 こいつは参った!本作の手塚昌明監督はこれまでにも『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000)と、直接本作につながる『ゴジラ×メカゴジラ(2002)』を監督しているが、正直、それほどの監督とは思ってなかった。その先入観が見事に打ち砕かれた。

 見事だった。まさかここまでの作品を目の当たりにするとは…完成度においては近年の最高傑作『ゴジラ×モスラ×キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)をさえ凌いでいると言って過言無いほど。手塚監督、徹底的なリサーチを行ったんだろうな。

 先ずストーリーだが、主人公を整備士に持ってきたと言うのが卓見。平成シリーズ以降、大体主人公と言えばゴジラと直接戦う人間が主なんだが、彼の場合は直接戦うのではなく、機龍を動かすことが最大の使命となる。最初から最後まで、彼はその姿勢を一貫して貫いている。直接戦うのは人任せなんだが、それでも遙かに主人公として、キャラクターが立っていた。

 ただ、機龍を起動することについては一貫しているが、その姿勢が変化(成長)しているのが大きな特徴。最初はあくまで機械を愛する整備班として、機龍を機械としてのみ考えていた。その後、小美人のメッセージを聞くことによって、機龍とゴジラの相関関係を知ることにより、機龍を動かすこと自体に疑問を感じ始めた。彼にとって機龍を動かすと言うことは、死者に対する冒涜であると共に、ゴジラを呼び込む可能性を作っていると言うことになる。しかし一整備士としてその疑問を公にする訳にはいかず。ここで彼にとって機龍を動かすことは愛情から義務へと変わる。ここで前機龍パイロット家城茜(釈由美子)との交流を持ってきたのはピッタリのタイミング。その後、モスラの危機に出撃しながら不稼働となった機龍を動かそうとする。ここでは純粋にゴジラを倒すため、なかんづく人類を救うべく彼は機龍に乗り込む。ここで終わるならそこそこのストーリーで終わるのだが、その後があった。機龍内部に閉じこめられ、そこで彼は初めて機龍(死んだゴジラの骨)が一体何を求めているのか、そしてなすべき事をしようとする機龍の意志を感じ取る。ここが肝。それが勘違いでなかった証拠に機龍は彼に最後のメッセージ「SAYONARA」を遺すと言う演出を出してくれた。機龍は分かっていたのだ。彼がこれまでどれだけ自分を愛していたのか、そして自分の最後になすべき使命を、最後に自分を最も愛してくれた人に伝えるために…ちょっと私らしくなかったかな?

 怪獣の演出についても巧み。最初のモスラ登場シーンは、やはりこうでないと。怪獣は最初から見えていてはいけないんだよ。最初は未確認物体として登場して、そこから巨大感を演出してくれなくちゃ。雲間から現れるモスラのシーンは鳥肌が立つほどの見事さ。その後モスラとゴジラとの戦いに移るが、圧倒的不利でそれでも戦い続けるモスラの姿。決して戦うことを望んでいなかったはずの機龍が参戦した時、命を賭けて機龍を守ろうとする意外さ。その後、自らの子供を守るために盾となってゴジラの火炎に焼き尽くされるまで、たたみ込むような親モスラの演出には賞賛。機龍の演出もなかなか。必殺武器であるアブソリュートゼロ砲を封じられつつ、ゴジラとガチンコ対決に臨む演出。動いているようで動いてなかった前作と較べて格段に個性を増していた。そして最後に自らの意志で立ち上がり、ゴジラもろとも沈んでいく…その分、子モスラの演出はちょっと薄かったかな?二匹出したのは、この世界では無かったはずの『モスラ対ゴジラ』(1964)のオマージュなんだろうけど。吹っ飛ばされて腹見せた時、『モスラ』(1961)にあったような節足も見られなかったし。それと、小笠原で誕生したから小美人の歌だけで誕生したけど、出来れば見たかったなあ。インファント島の住民による暗黒舞踏を(笑)。そうそう、やっぱり攻撃色は赤なのね(笑)

 それで特にミレニアムシリーズに顕著なラストシーンのケレン味だけど、今までで一番良かったと思うよ。今暴れ回ったゴジラが復活するような演出だったら怒ってた所だけど、あんな終わり方があったか!次回作につながりを持たせつつ、きっちり終わらせてくれたその姿勢に好感。次回作はいよいよ誕生50周年記念だが、期待が高まるね。

 あるいはあるかな?今までありそうで絶対無かった最強同士の決戦『ゴジラ×ゴジラ』が。

 それと本作にはもう一つある。

 我ながら性格悪いと思うけど、私にとって怪獣映画を観る際の一つの楽しみ。あら探しが本作では出来なかった。くそ(笑)

 困ったことに(?)、設定の練り込みがほぼ完璧なんだよ。それでも強いて言えば、途中で死体で登場したカメーバを「突然変異」と言ってたけど、カメーバが登場した『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』(1970)では宇宙からの流体生物が寄生したもの。それと、本作では地下鉄を用いたアクションシーンが登場するが、東京に網の目のように走る地下洞窟がゴジラによって踏み抜かれなかったとは…この辺、本当にどうでもいいことだからなあ。敗北だ。

(評価:★4)

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