三田静香は和辻摩子に、羽鳥翔は摩子の母親に。「Ｗ」は女達(women)の悲劇であり劇中劇の中の女達(women)の悲劇を表しているのだろう。「劇中劇＝本体」だから「W」は一つだったのか。ラストはこれを守っただけなのだ。

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難しい役を体当たりでマジで凄い神懸かり的演技連発だった薬師丸ひろ子は勿論、悪い子役専門に進化していく高木美保の悲劇、わざわざ名に恥じぬよう素の素晴らしい演技（灰皿はなかったが台本を投げ飛ばす）をした蜷川幸雄のユーモアセンス、太陽光発電の申し子みたいに無尽蔵な男気を溢れさせる演技の世良様の後光、 処女狩り演技の三田村邦彦はチョット先入観でイマイチだったが、「うわっ、酷い…。これはいつもの事を表現しているのか？」と邪推したくなるような三田佳子のフィットした演技etc.は意外とイイ！と言うより、凄く良かった！！

さらに梨元、福岡、須藤、藤田といった当時（今もだが）売れっ子だった本物の芸能レポーターを持ってきた点と、劇中劇は本当に蜷川幸雄が実際に演出、舞台美術は妹尾河童が手がけているほか劇中劇は蜷川軍団総動員で手抜き臭がなく非の打ち所のないリアルな仕上がりになっている点も見逃せない。

それにしても何でこんなに平均点が低いのだろう？確かに人によっては暑い熱い厚い演技に、一歩〜十歩後退してしまう方がいるだろう。私も始まりはややゲンナリだった。特に大勢で鏡張りの稽古場で踊っているシーンは絶望で救いようのないシーンだった。が、しかし劇中劇の「Ｗの悲劇」の登場人物と、その中で繰り広げられる出来事が次第に外枠の「Ｗの悲劇」に迫って同化してくる異質の躍動感、絶妙なバランスとリンクは見る者を引きつけるものが感じられ、84年キネ旬脚本賞を獲っただけあると言えるのではないだろうか。

2002/8/27